2014 Fiscal Year Research-status Report
新概念「重力刺激あて材」と「応力刺激あて材」の提唱
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26660140
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 正人 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30242845)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | あて材 / 材形成 / 応力応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹幹が傾斜すると傾いた姿勢を正しい位置へと戻すために、あて材という特殊な組織が形成される。傾斜によって、幹には重力方向が変化する刺激と曲げの応力が負荷する2つの刺激が作用することになる。それぞれの刺激にどのように応答して、あて材は形成されるのであろうか。重力方向の変化と応力負荷の2つの刺激を切り分けることで、単独刺激への応答を明らかにするのが本研究の目的である。 本年度は、重力方向を変化させずに鉛直状態のままで、応力の刺激だけを加える生育方法の確立を目指した。また、応力刺激単独への応答を探索した。生育方法の確立について、さまざまな方法を試して、本研究で生育方法として利用できると判明した方法は次の2つである。幹に重りをつけて上から圧す方法と幹の上下2点間を器具で押し縮める方法である。生育方法の確立を追求する過程で、負荷する応力の大小が細胞壁形成の応答に影響することが判明した。 針葉樹スギを用いて、鉛直状態で圧縮の力を受けながら材形成した場合には、次のような応答が生じることが分かった。細胞の放射方向の直径が減少する。横断面における細胞壁の厚みが増加する。これらの特徴は、重力方向変化と応力負荷の2つが同時に加わったときに形成される自然なあて材の特徴とは明らかに異なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重力方向を変化させずに応力だけを負荷しながら、苗木を生育する手法を確立するという当初の目的を達成した。加えて、手法の違いによる長所と短所を把握し、今後の研究に有用な経験と情報を入手できた。
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Strategy for Future Research Activity |
樹幹が傾斜したとき、針葉樹は圧縮の応力側に、広葉樹は引っ張りの応力側ににあて材が形成される。針葉樹は圧縮にだけ応答するのか。広葉樹は引っ張りにだけ応答するのか。本年度に確立した生育方法を適用して、針葉樹の圧縮応力への応答と引っ張りの応力への応答を明らかにする。また広葉樹の圧縮応力への応答と、引っ張りの応力への応答を明らかにする。
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Causes of Carryover |
試みた試料生育方法の中には、幹に傷がつく方法もあった。その場合、傷の影響で生育途中で枯れてしまった個体も多数あらわれた。この経験から適切な実験試料の生育調整方法の確立に重要な知見が得られた。結果として、解析を行う個体数が当初の計画よりも減少することになった。したがって、解析で使用する消耗品の購入費用が当初計画よりも減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の成果を吟味して、試料調整に向いた苗木生育方法を確立した。この方法を用いて、次年度は、解析個体数を増加させる。さらに、針葉樹に加えて広葉樹の応力応答も解析する。そのための消耗品の増加分と研究補助の人件費にあてる。
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