2014 Fiscal Year Research-status Report
実用的除染に向けた担子菌の菌体外多糖への放射性核種の吸着・蓄積及び回収法の開発
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26660141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 崇人 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (30362403)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 担子菌 / 菌体外多糖 / リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,木材成分の一つであるリグニンを分解する担子菌の菌体外多糖に注目する.これを利用して原発事故による汚染水や土壌中の放射性核種等を高効率に吸着・蓄積させ,回収する方法の開発に繋げることを目的としている. 今年度はリグニン由来の分解物の一つであるバニリンを与えると菌体外多糖を大量に産生するリグニン分解性担子菌を用いてその菌体内タンパク質の発現挙動を調べた.具体的には,プロテオミクスの手法を用いて,菌体外多糖高産生時に発現が誘導されるタンパク質(酵素)の同定を行った.その結果,グルコースを炭素源とした無機塩合成培地にバニリンを添加して培養した場合,バニリン等の芳香族化合物分解系,解糖系,TCA 回路,ペントースリン酸経路等の代謝系に関わる酵素の誘導が確認された.また,菌体外多糖の主成分の生合成に関わる酵素の発現誘導と菌体外多糖を分解する酵素の発現抑制が強く示唆される結果も得られた. 一方,菌体外多糖を高産生する担子菌や高産生を誘導するリグニン由来の分解物の探索も行った.その結果,担子菌によっては,同属・同種でも菌体外多糖の産生量が大きく異なるものが存在した.また,菌体外多糖の産生の誘導物質であると考えているリグニン分解物については,今回はバニリンを用いたが,他のリグニン由来の分解物でも同様の現象が起こると示唆される結果が得られた.従って,今後,菌体外多糖を産生させるためにどの担子菌を用いるか,そして,菌体外多糖の産生を誘導させるためにどのリグニン由来の分解物を用いるかを詳細に検討し,選定する必要性が出てきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
担子菌の菌体外多糖高産生時に発現が誘導されるタンパク質・遺伝子の同定は順調に進んでいる.しかしながら,菌体外多糖の放射性核種等の吸着・蓄積特性の把握を行う際に,どの担子菌を使用するか,そして,菌体外多糖を高産生させるのにどのリグニン由来の分解物を用いるか,いずれも種類が多いため,これらの選定に時間を要している.従って,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き,担子菌の菌体外多糖高産生時に発現が誘導される遺伝子・タンパク質の同定をプロテオミクスの手法を用いて行い,菌体外多糖の産生に重要な役割を果たす酵素や遺伝子を同定する.これらの情報を基に担子菌,或いは,菌体外多糖を産生する他の微生物を用いた高産生菌の育種へと繋げていきたい.また,菌体外多糖の放射性核種等の吸着・蓄積特性の把握を進め,さらに,高吸着・蓄積菌の固定化に向けた担子菌及び菌体外多糖の固定化方法を開発する予定である.
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