2015 Fiscal Year Research-status Report
実用的除染に向けた担子菌の菌体外多糖への放射性核種の吸着・蓄積及び回収法の開発
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26660141
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 崇人 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (30362403)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 担子菌 / 菌体外多糖 / リグニン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,微生物が産生する菌体外多糖を利用して原発事故による汚染水や土壌中の放射性核種等に相当する金属をその菌体外多糖に吸着・蓄積させ,回収する方法の開発を目的とする.今回は,木材成分の一つであるリグニンを分解する担子菌(キノコ)が産生する菌体外多糖に注目した. 昨年度に引き続き,担子菌の中でもリグニンを高選択的に分解するユニークな木材腐朽菌(白色腐朽菌) Ceriporiopsis subvermispora を用いて菌体外多糖産生時にどのようなタンパク質(酵素)が発現するのかをプロテオミクスの手法を用いて解析した.その結果,「エネルギー生産及び変換」,「糖,アミノ酸,脂質の代謝」,「細胞内プロセス・シグナル伝達」等に関与するタンパク質(酵素)を昨年度よりも数多く同定できた. C. subvermispora の培養の際,木材の生分解で大量に生成するバニリンを加えて菌体外多糖を産生させているが,そのバニリンを始めとする芳香族化合物の分解・代謝に関わる酵素や遺伝子の発現誘導も確認できた. 一方,菌体外多糖の金属吸着・蓄積特性を把握する一環として,C. subvermispora を含めた様々な担子菌を用いて,菌体外多糖の高産生条件を調べた.培養の際に,どのような培地で,また,どのような基質を添加すれば,様々な担子菌に対して菌体外多糖の産生を促進できるかを試験したが,今回は最適な培養条件や基質を絞り込むことができなかった.しかしながら,C. subvermispora のような木材腐朽菌以外に食用キノコにおいても菌体外多糖を多く産生する担子菌株があった.安全性や培養の簡便さを考慮すると,放射性核種を始めとする金属の高吸着・蓄積菌として食用キノコも利用できるのではないかと判断した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロテオミクスの研究は順調に進んでいる.しかしながら,菌体外多糖に関する文献や国内外の微生物株保存機関の菌株の調査,そして,実際の培養による菌体外多糖の産生の確認等で放射性核種等の金属に対する高吸着・蓄積菌の選定に時間を多く費やした.さらに,当初の計画で候補として注目していた放射性同位元素の吸着力が極めて高い担子菌株については,その菌株の保存機関の都合により分譲ができないことが判明した.従って,「やや遅れている」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
C. subvermispora のプロテオミクスで得られたこれまでの結果(同定されたタンパク質の情報)を基に,バニリンを添加するとなぜ菌体外多糖が高産生されるのかその機構について精査する.また,高吸着・蓄積菌として選定した担子菌の固定化に取り組み,放射性核種に相当する金属の吸着試験を行う.さらに,吸着した金属の脱着方法については,極力強酸を用いなくてもシュウ酸等の有機酸が多く含まれる担子菌の培養ろ液で代用できるかを試験し,回収に繋げる予定である.
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Research Products
(1 results)