2014 Fiscal Year Research-status Report
次世代物質変換に向けたプリンテッド・ペーパーリアクターの創出
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26660144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
古賀 大尚 大阪大学, 産業科学研究所, 特任助教 (30634539)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 触媒 / 機能紙 / ナノセルロース / 空隙構造制御 / マイクロリアクター / ナノリアクター |
Outline of Annual Research Achievements |
環境に優しいものづくり、すなわち、グリーン・サステイナブルケミストリーの実現に向け、高効率な物質変換を可能とする触媒リアクターに大きな注目が集まっている。しかし、従来の触媒リアクター作製には、高価で重いシリコンまたはガラス基板に加え、微細流路を形成するためにリソグラフィーやエッチングといったエネルギー消費の大きなプロセスを要することがネックとなっている。 そこで本研究では、省エネ・簡便な印刷プロセスと安価・軽量・多孔質な紙基板を用いることで、プリンテッド・ペーパーリアクターの創出を目指した。今年度は、高活性な金属ナノ粒子触媒の印刷塗布技術、および、基板となる紙内部の空隙構造制御技術の開発を行った。まず、塩化金酸や硝酸銀等、金属ナノ粒子触媒前駆体の水溶液を印刷塗布後、約110℃で20分程度加熱する還元剤フリーの極めて簡便なプロセスで、紙基板内部に高活性な金属ナノ粒子触媒をその場合成することに成功した。これは、金属イオンの吸着および還元能を有する高分子を紙内部にあらかじめ抄き込んでおくことによって実現した。また、紙の構造支持体として、従来のセルロースパルプ繊維や最先端のナノセルロース繊維を駆使することで、反応物質の流路となる紙基板内部の空隙構造をナノ-マイクロレベルで制御することにも成功した。水系・室温・大気下における4-ニトロフェノール(水質汚染物質)還元による4-アミノフェノール(医薬中間体)合成プロセスをモデル触媒反応に用い、調製した金ナノ粒子触媒担持ペーパーリアクターの触媒性能をバッチ式で評価したところ、良好な反応効率を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、金属前駆体水溶液の印刷塗布および加熱処理によって、高活性な金属ナノ粒子触媒を紙基板内部でその場合成することに成功した。この手法を用いれば、紙基板上に様々な種類の金属ナノ触媒をパターニングすることが可能となる。また、反応物質の流路となる紙基板内部の微細空間をナノ-マイクロレベルで制御する技術も確立した。これにより、紙内部の微細空隙構造、すなわち、触媒反応場をプロセスに応じて自在に制御・最適化することができる。 以上のように、今年度の目的は達成できており、本研究は順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、フロー式による連続反応プロセスにおいて、調製したペーパーリアクターの触媒性能評価を進めていく。特に、紙基板内部の微細空隙構造と触媒反応効率の相関を重点的に精査、知見を集めて最適化し、ペーパーリアクター触媒性能のさらなる向上を図る。
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Causes of Carryover |
当初は、フローマイクロ反応装置一式を購入して、紙基板上に形成した微細流路でフロー反応を検討する予定であった。しかし、微細空隙構造を有する紙自体をフローマイクロ反応場と見なす戦略が有効であると判断し、比較的高価なフローマイクロ反応装置一式の購入を見送り、代わりに安価なマイクロシリンジポンプを購入して検討を進めることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、機械処理または化学処理で調製した多様なナノセルロースを自作・購入し、紙の微細空隙構造制御による最適なフロー触媒反応場の構築に注力する。
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