2015 Fiscal Year Annual Research Report
樹木糖鎖とアミノ酸が協働する有機分子触媒イノベーション
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26660145
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北岡 卓也 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90304766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ナノセルロース / プロリン / 有機分子触媒 / アルドール反応 / カルボキシ基 / マトリックス効果 / 立体制御 / 界面反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木多糖類のナノセルロースとアミノ酸のプロリンからなる全く新規な有機分子触媒反応を発見した。有限・希少な貴金属や産業利用に課題の多い酵素に替わり、天然有機元素のCHONPSからなる有機分子触媒の著しい活性向上と不斉誘起効果の発現に成功した。多糖結晶界面を反応場とする新規不斉反応は、環境共生社会のモノづくりにイノベーションをもたらす。 【最終年度の成果】 プロリン(L体・D体)およびtrans/cis水酸化体など種々のプロリン誘導体を有機分子触媒とするアルドール反応において、針葉樹由来のTEMPO酸化ナノセルロース存在下で収率90%以上かつee 90%/R以上を達成した。触媒単独では非常に低活性かつラセミ体しか与えないことから、触媒種の分子構造が関与する従来の触媒機構ではなく、ナノセルロース結晶界面で起こる特異的な相互作用により、基質や反応中間体の立体構造が制限され、高活性かつ高エナンチオ選択的な不斉触媒反応が進行したと考えられる。さらに、触媒自体に不斉源のない環状アミン誘導体でも反応が進行したことから、未知のマトリックス効果による新規反応機構の存在も示唆された。 【研究期間全体の成果概要】 TEMPO酸化ナノセルロースのカルボキシ基をNa塩型にすることで、プロリンによるアルドール反応効率が著しく向上する「協同的触媒効果」と、ほぼR体のみを合成できる「不斉誘起効果」を見出した。ナノセルロース自体には触媒活性がなく、プロトン型や高分子電解質のカルボキシメチルセルロースではこの効果が発現しないことから、多糖結晶界面に規則的に集積した官能基の関与が強く示唆された。また、マトリックスの前処理により不斉スイッチングの可能性も示唆された。今後、ナノセルロース界面を不斉反応場とする反応機構の詳細を解明することで、天然多糖類と有機分子触媒の融合による新規不斉有機合成の学理と技術の確立を目指す。
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Research Products
(18 results)