2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクロチャネルを用いるin vitroカロース中空ファイバー生産モデル系の構築
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26660146
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
近藤 哲男 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30202071)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロトプラスト膜タンパク / カロース / プロトプラスト / 中空ファイバー生産 / マイクロチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、研究代表者らが見出した「大過剰のカルシウムイオン添加した酸性下でカルスプロトプラストを培養すると、細胞外に、ナノサイズの中空糸が束となったマイクロサイズ幅(14μm)のカロース(β-1,3-グルカン)巨大繊維を生産・噴出する」という現象をモデル化し、植物ナノ繊維化の半人工プロセスを提案しようとするものである。 昨年度は、シラカンバの葉柄由来のカルスからプロトプラストを調製し、マイクロマニピュレーターを用いてマイクロ流体デバイス内にプロトプラストを導入て反応バッファーをプロトプラストが固定されたデバイス内に流すことでカロース生産を試みた。その結果、緑色蛍光を発する膜状の物質が観察され、カロースの凝集物、もしくは流している途中で脱離した微小な細胞膜片に合成されたカロースが堆積されたものだと考えられた。 本年度は、カロース合成に関与するプロトプラスト膜タンパクの抽出をまず検討した。その酵素活性を評価するために所定条件の反応により得られたカロースと推定される物質の生産量の定量をAniline blue染色により蛍光分光光度計を用いて試みた。粗酵素を用いた酵素反応の後の液中には蛍光顕微鏡観察レベルでは何も観察できなかった。そこで、透過電子顕微鏡(TEM)観察に酵素反応液試料を供したところ、幅約30 nmのファイバーとそれを構成する幅約10 nmのサブフィブリルが観察された。 これが中空糸となっているかについては現在検討中である。 この結果は、抽出したプロトプラスト膜タンパクが不定形ではなく、カロースファイバー形態を形成させる酵素群であることを示唆するとともに、これを半人工触媒系として次年度のマイクロチャネル内に導入することにより、植物ナノ繊維化の半人工プロセスの構築へとつながっていくものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で、「平成26年度から27年度の2年以内のデバイスの完成を目指す」とあり、それに向かって成果は順調にあげている。 本研究は、植物ナノ繊維化の半人工プロセスの提案へと挑戦するものである。そのためのキーポイントは、マイクロチャネル流路にカロース合成複合酵素の役割の一部を担わせる点にある。すなわち、マイクロチャネル流路とプロトプラストの合成酵素を含有した細胞断片(ゴースト)とを合体させたin vitro半人工デバイスの構築が最優先される。本27年度の結果により、抽出したプロトプラスト膜タンパクがカロースファイバー形態を形成させる酵素群を含むことが示唆された。これにより、合成酵素を含有した細胞断片(ゴーストか膜タンパク)を合体させたin vitro半人工デバイスの各部品の準備ができたことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、研究計画にしたがって、Y字型チャネルを作製し、Y字の2分岐入路から2液を導入させる培養を試みる。 まず、in vitro半人工デバイスの構築検討の前に、マイクロチャネル流路として、試薬の流れパターンの検討が必要である。すなわち、ポンプの圧力に依存した流速、ならびに試薬含有溶液の粘度に依存して、乱流または層流の流れを生じる。層流となると溶液自体の混合は起きにくく、この層流形成がマイクロチャネルのリアクターとしての欠点とされている。 本課題のY字型チャネルの場合は、2つの入り口から流れる各試薬が、合流しても層流のまま別々に流れる場合と、乱流にして2液を合流点で混合しながら培養するという流路による二つの培養法を試みる。そこで、流れパターンに大きく影響するポンプ圧、濃度依存する試薬の粘性の相関による、流れパターン(層流か乱流か)の制御を試みる。 仮に反応に不利と考えられる層流の場合でも、繊維方向に垂直な分子間ネットワーク形成を抑制して、最終的に流れの方向だけに配向した、いくつかのナノファイバーが自己集積した繊維構造となる可能性もある。
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