2014 Fiscal Year Research-status Report
単離リグニンの側鎖立体構造の制御による熱特性の制御
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26660148
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
久保 智史 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, チーム長 (50399375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋田 光 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (40353809)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 単離リグニン / 立体構造 / 異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
定法に従いβ-O-4型のリグニンモデル化合物(guaiacylglycerol-β-guaiacyl ether, GG)を合成し、アルカリ処理あるいはイオン液体(1-ethyl-3-methylimidazolium acetate)中で加熱処理することで、C6C2(2-methoxy-4-[2-(2-methoxyphenoxy)-vinyl]-phenol)あるいはC6C3(4-[3-hydroxy-1-(2-methoxyphenoxy)-propenyl]-2-methoxy-phenol)エノールエーテルを合成した。両化合物の[E]/[Z]異性体比は、それぞれ~45/55と~5/95であった。異性体比の偏りが大きかったC6C3エノールエーテルの紫外線(254 nm)照射による構造安定性と光異性化の検討を行った。紫外線照射は溶液状態で行ったが、使用する溶媒の種類により構造安定性あるいは異性化率が異なった。クロロホルム中では短時間の紫外線照射で全量のエノールエーテルが酸分解した。それに対してメタノール中での紫外線照射に対してはエノールエーテルは比較的安定であり、分解物であるグアイアコールの生成量が(GCピーク面積として)5%以下になる条件で、[E]/[Z]異性体比が~45/55に光異性化した。DSCによる融点測定では、[Z]体から[E]体に異性化することで融点が低下したが、[E]体のDSC測定では、[Z]体への異性化が速度が速く良再現性のデーターを得るためには分析条件の再検討が必要である。次にMWL中に生成するエノールエーテルの定量法の検討を行った。C6C3エノールエーテルのUVスペクトルの最大吸光波長は269 nmであり、GGの最大吸光波数(279 nm)とは異なっていた。また、C6C3エノールエーテルのUVスペクトルでは約300 nmにGGでは見られないブロードな吸収帯が現れた。この点を利用し、イオン液体処理を行ったスギMWLのUVスペクトルからイオン液体処理前のMWLのUVスペクトルを差し引くことで、MWLのイオン液体処理で生成するエノールエーテル構造の定量を試みた結果、135℃68分の処理でMWL中に0.13mmol/g のエノールエーテル構造が生成することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り、モデル化合物の光照射による異性化の可否を明らかにし、異性化による熱特性が変化する可能性を示した。また、高分子リグニンモデルとしたMWLのエノールエーテル構造の定量方法を新たに見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明確に出来なかった熱による異性化速度が速い異性体の熱特性を明確に検出するDSCの測定条件を見出す。現在、温度変調法により予備加熱処理を行わない条件で測定条件の検討を行っている。また当初の計画通り、高分子リグニンの光照射による構造安定性と異性化を明らかにし、異性化による単離リグニンの熱特性の変化を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた研究機器の購入が不要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究が概ね順調に進行していることから、学会での成果報告あるいは、論文投稿に係わる経費として使用する。
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