2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26660149
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
松永 浩史 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 主任研究員 (80391184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
波多 聡 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60264107)
片岡 厚 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材改質研究領域, 室長 (80353639)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イメージング / 単原子 / 超高分解能電子顕微鏡 / 木材細胞壁 / 木材保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
住宅用建築材や土木用木材などでは、腐朽などに対する耐久性を確保するため、銅系水溶性保存剤を含浸させる保存処理が行われる。そのため、木材細胞壁内における保存剤(銅)の分布と性状は、防腐効力の善し悪しを決定づける重要な因子となる。 本研究では、原子レベルで清浄な薄膜作製技術を確立することにより、収差補正分析電子顕微鏡による木材細胞壁中の銅の単原子イメージングを成功させることを目的とし、木材保存剤の主成分であるアミン銅と木材成分との反応機構の解明に役立てる。 多孔質構造の木材から数十nm厚の薄膜(超薄切片)を作製する際、ウルトラミクロトーム法では困難なことから、FIB(集束イオンビーム)法を用いて薄切化した木材細胞壁の超薄切片を用意した。しかし、木材の場合、FIBで作製した超薄切片では、FIBで薄切化する際に削り取られたタングステン保護膜やFIB鏡筒の雰囲気内に残留しているタングステンガスなどが保護膜側面に位置する観察面に付着してしまうことから、清浄な薄膜を得るために、へき開法を導入した。 すなわち、アミン銅処理材の小ブロックから、鋭利な刃物で木材細胞壁を引き裂いて、先端部の極薄膜化したへき開面を調製するため、ミクロトーム刃、カッター刃など各種の刃物によるへき開を試み、得られたへき開片の先端部における薄膜化の状況を各種顕微鏡等を用いて比較した。その結果、銅の単原子のイメージングや存在状況の解析に耐えうる清浄で良好なへき開が達成できる条件が明らかになった。 以上のように、アミン銅処理された木材細胞壁の極薄膜化がへき開法の導入により可能になったことから、次年度は、極薄膜化したへき開面を収差補正分析電子顕微鏡に供し、銅の単原子のイメージングや存在状況の解析を行うことにより、目的を達成する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
木材細胞壁から原子レベルで清浄な薄膜作製技術を確立するにあたり、FIB法(集束させたイオンビームを試料に当てて削り取る技法)では、収差補正分析電子顕微鏡を用いた解析から、薄膜作製過程で用いるタングステン(W)原子が混入することが判明し、FIB法は木材のような生物試料への適用が困難であることが分かった。 一方、へき開法(鋭利な刃物で木材細胞壁を引き裂いて薄膜を作製する技法)では、銅の単原子のイメージングや存在状況の解析に耐えうる清浄で良好なへき開が達成できる条件を明らかにすることができた。 したがって、本課題はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
鋭利な刃物で木材細胞壁を引き裂くへき開法が有効であることが明らかになったため、へき開法で極薄膜化した領域を収差補正分析電子顕微鏡を使って解析し、銅の単原子イメージングとその再現性の確認を行う。なお、薄膜作製ならびに解析にあたっては、分担者と協力しながら実施する。
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Causes of Carryover |
へき開法の手法やそれに用いる刃物等の選定・絞り込みを行って費用を減らすなど予算の効率的な使用に努めたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試験体の材料費・作製費、分析機器消耗品等の購入を予定している。研究代表者が、九州大学で収差補正分析電子顕微鏡を用いる実験を遂行するための旅費、および研究打合せ等に係る旅費を予定している。さらにデータの取りまとめ等のための非常勤職員の雇用費や、研究成果を学術雑誌、国内学会等で報告する印刷代、旅費に使用する予定である。
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