2015 Fiscal Year Annual Research Report
赤潮原因藻ヘテロシグマの環境における増殖ダイナミクスの分子細胞生物学的研究
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26660153
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
植木 尚子 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (50622023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 奈津子 国立研究開発法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 研究員 (20612675)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 赤潮 / 海洋細菌 / 優占性 |
Outline of Annual Research Achievements |
赤潮の正体は、異常増殖した赤潮原因藻の高密度群集である。通常は海水中に多種類の藻類がそれぞれ低細胞密度で共存するが、何らかのきっかけで一種類の赤潮原因藻が急速に増殖し、『赤潮』を形成する。つまり、赤潮形成とは、水域の生態系バランスが一時的に大きく崩れ、一種類の赤潮原因藻に限局した異常増殖が起こった状態と言える。赤潮原因藻の環境動態は、増殖・死滅の速度バランスで決定される。死滅の原因は、殺藻バクテリア・ウイルス、捕食者によることが解明されつつある。一方で、赤潮発生時に見られる急激な増殖の機序は未だ不明である。富栄養化や水温上昇と赤潮発生件数に正の相関がみられるが、実験室でこれらの状況を再現して赤潮原因藻を培養しても、赤潮発生時に見られる急激な増殖は起こらない。つまり、富栄養化・高水温は、赤潮発生時の赤潮原因藻の異常増殖の説明としては不十分といえる。 我々は、赤潮原因藻の一種であるヘテロシグマに共生する海洋細菌で、増殖を加速し、最高培養密度増加させる細菌を数種単離した。このうちでも、Altererythrobacter ishigakiensisは、ヘテロシグマの増殖は促進するが、一方で、他の赤潮原因藻シャトネラの促進には影響しなかった。ヘテロシグマとシャトネラが共存した場合、シャトネラの増殖が抑えられ、ヘテロシグマが優占することは以前からしられていたが、ヘテロシグマとシャトネラの混合培養系にA ishigakiensisを添加すると、ヘテロシグマ特異的に増殖を促進すると共に、ヘテロシグマのシャトネラに対する優占性を強化することを見いだした。この知見は、ある種の細菌がヘテロシグマ特異的に増殖促進し、ヘテロシグマ優占要因として重要な役割を担うことを強く示唆する。
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Research Products
(2 results)