2014 Fiscal Year Research-status Report
赤潮個体群の短期挙動予測のための「赤潮診断キット」の開発
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26660155
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
外丸 裕司 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (10416042)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NASBA法 / 核酸クロマトグラフ / 生理状態診断 / 赤潮診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、NASBA 法ならびに核酸クロマト法を応用し、遺伝子発現様態に基づき赤潮原因プランクトンの生理状態を迅速かつ簡便に把握するための「赤潮診断キット」の開発を目指す。これにより、特殊な実験装置を用いることなく短時間で赤潮の生理状態診断を行うことが可能となり、診断結果に基づき赤潮個体群の高精度な挙動予測を行うことができるようになるものと期待される。 今年度は赤潮原因珪藻のキートセロス・テヌイシマスをモデルとした上記の開発を実施した。ハウスキーピング遺伝子(コントロール)としてアクチンを指標とし、増幅産物224ntのプライマーを設計した。また、本種珪藻のリン欠乏状態を強く示唆するアルカリフォスファターゼ遺伝子の領域に増幅産物が218ntになるようなプライマーの設計を行った。本種培養をペレット化し、キアゲンRNeasyで抽出したRNAに対して上記で設計したプライマーをNASBA法を用いて増幅したところ、概ね目的とするサイズの増幅産物が得られたことからプライマーの設計自体は成功したものと推察された。次に、NASBA法での最適反応時間ならびに反応に必要なTotal-RNA量等の検討を行った。その結果、Total-RNAが0.1ngの場合、発現量が十分なmRNAがあれば、反応時間は15分程で十分に検出可能と思われた。しかしながら、ハウスキーピングとターゲットとの差を明確に分けるためには、増幅時間の検討がさらに必要と思われた。 各産物の中間領域にプローブを設計し、核酸クロマトグラフを作製した。上記のNASBA法による増幅産物を核酸クロマトグラフでアッセイしたところ、いずれも目視で検出の有無が明瞭に確認できることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標である、赤潮原因生物の生理診断に必要なハウスキーピング遺伝子ならびにリン酸欠乏状態を示唆するアルカリフォスファターゼ遺伝子の各領域に対し、NASBA法用プライマーならびに核酸クロマトグラフ用プローブの設計を実施することに成功した。またその使用条件の検討に着手することができ、核酸クロマトグラフでも機械等に頼らない目視によるターゲット産物の検出を確認することに成功した。来年度においてさらなる検討事項はあるものの、今年度は技術基盤を整備することができたため、概ね本課題は順調に進んだものと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の実験により抽出された、NASBA法での反応時間などの問題点について、さらに検討を進めていく。また、珪藻赤潮により被害を受ける大型藻類である「ノリ」もまた、栄養塩不足などにより色落ちが進むものと考えられている。そこで、珪藻赤潮の被害を受ける側の生理状態も簡便に把握する技術の確立を目指し、現場における両者の関係を包括的に理解していくための基礎知見の収集を目指す。 さらに今回用いた珪藻以外に、赤潮原因鞭毛藻類に対する同技術の適用を図るための基盤形成に着手する。
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Causes of Carryover |
今年度の試薬消耗品として核酸クロマトグラフの作製費を見込んでいたが、実際にはほとんど費用がかからなかった。しかしながら、次年度以降、価格が上がる可能性がある。また、人件費や旅費についても、研究が順調に進んだため、見込み通りに使う必要が生じなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に試薬購入費に割り当てる予定。
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Research Products
(1 results)