2014 Fiscal Year Research-status Report
エコゲノミクスで創るヒラメ資源の管理と放流システム
Project/Area Number |
26660157
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
池田 実 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70232204)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ヒラメ / 人工種苗 / 放流効果 / ゲノミクス / マイクロサテライトDNA / ミトコンドリアDNA / 親子鑑定 / 血縁関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
種苗放流によるヒラメの資源造成効果を検証するためには、天然海域において放流魚やその子孫をDNAマーカーにより特定することが求められる。そのためには、使用するDNAマーカーが親子関係のみならず完全同胞(兄弟姉妹)や半同胞(異父母の兄弟姉妹)さらに祖父母と孫といった血縁関係についても判別できる識別能を有していることが必須である。今年度は、既に報告されているヒラメのミトコンドリア(mt)DNAとマイクロサテライト(ms)DNAマーカーについて個体識別能をあらためて精査し、高い個体識別能を持ったマーカーセットを構築することを第一の目的とした。次に第二の目的として、栽培漁業センターにおいて実際に生産された人工種苗と使用された親魚集団の親子ならびに血縁鑑定を試み、これらのマーカーセットの有効性を検証した。 DNAマーカーは事前にヌルアリルの有無や変異性(アリル数や平均へテロ接合度)を基準に選定したmsDNA12ローカス、ならびにmtDNA調節領域とND2遺伝子を合わせた1873塩基を用いると、天念集団での個体一致確率はmsDNAで10のマイナス17乗、mtDNAで0.001%と非常に高い個体識別能を示すことがわかった。 親魚集団と種苗のDNA親子鑑定の結果、全ての種苗個体について父母を特定でき、構築したマーカーセットの有効性を確認できた。調べた種苗192個体のうち、水槽1の親魚群から生まれた個体は49個体、水槽2の親魚群から生まれた個体は143個体であった。親となっていたのは、水槽1ではメス15個体とオス16個体、水槽2ではメス21個体とオス12個体で、再生産に寄与した親魚の割合は両水槽とも53%であった。水槽1の中で1個体のメスが残した子供の最大数は15個体(30.6%)、1個体のオスが残した子供の最大数は18個体(16%)であった。また水槽2では、メスの場合が25個体(17.5%)で、オスの場合が36個体(25.1%)であった。いずれの場合も再生産への寄与度が少数の雌雄に偏っている傾向が認められた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ヒラメ天然集団の地域適応の有無をゲノミクス情報から検討する予定であったが、次年度の計画である人工種苗そのものやその子孫を検出するためのマーカーセット作りを前倒しで行った。血縁関係を把握するための良好な検証系(実際の人工種苗生産現場)が得られ、構築したDNAマーカーセットの有効性を把握できたことは、放流効果判定システムを構築する上で重要なステップとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
天然に放流した場合でも人工種苗の血縁関係を他の天然個体と明確に識別して把握できるかどうかについて、天然集団の遺伝子型データとあわせてシミュレーションを行う。また、天然集団のゲノムスキャンを行い、地域適応の有無について検証する。これらの知見を総合化して、ヒラメ天然集団の遺伝的特性に合わせた人工種苗放流システムについて提案する。
|