2014 Fiscal Year Research-status Report
フグ毒分解酵素と分解メカニズムの解明:フグ毒はだれがどのように分解するのか
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26660169
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
長島 裕二 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (40180484)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 慎 岐阜医療科学大学, 保健科学部, 准教授 (30460497)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水産学 / 生体分子 / フグ毒 / 糠漬け / メタゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
フグ毒テトロドトキシン(TTX)の第一次生産者は海洋細菌と推定され、水圏環境に広く分布していることが知られている。しかし、TTXの分解についてはほとんど明らかにされていない。そこで本研究では、製造工程中にフグ毒の毒性減少が知られているフグ卵巣糠漬けに着目し、TTXを分解する微生物と酵素をスクリーニングして、それらを特定し、自然界におけるTTX分解メカニズムの解明に資することを目的とする。 今年度は、フグ卵巣糠漬けの原料となるゴマフグ卵巣と、製品におけるフグ毒成分分析を行い、原料の卵巣に比べ製品の毒性は低くTTXは減少しており、未知のフグ毒関連化合物が存在することを明らかにした。さらに、フグ卵巣糠漬け工程を模して、ゴマフグ卵巣を20%NaCl溶液または糠漬け液に浸漬して毒性値の変化を調べたところ、いずれの操作においても卵巣の毒性は著しく低下したが、これは卵巣から外液へTTXが流出することが主な原因であることがわかった。 次世代シーケンサーを用いてフグ卵巣糠漬け製造工程における微生物群集解析法を検討するため、塩漬け液および糠漬け液中の微生物群集を調べた。その結果、各工程中の液体には、真菌類と細菌類が異なる比率で存在していた。リボゾームRNA(rRMA)を抽出後、次世代シーケンス解析では、18S rRNAの第5保存領域、16S rRNAでは第3保存領域が最も効率良く群集解析できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フグ毒分解に関与する糠漬け液中の微生物の影響を調べるため、オートクレーブで滅菌した糠漬け液と非滅菌の糠漬け液で、それぞれゴマフグ卵巣を浸漬したところ、毒性変化に有意な差がみられなかった。これは、糠漬け工程中のフグ毒の減毒に微生物が関与している可能性が低いことを示している。このため、当初計画していたフグ毒分解微生物の解析を延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
オートクレーブで滅菌した糠漬け液と非滅菌の糠漬け液にゴマフグ卵巣を浸漬したところ、毒性変化に有意な差がみられなかったが、毒成分を詳細に検討した結果、糠漬け液および糠漬け液に浸漬した卵巣から、未知のフグ毒関連化合物を検出した。これは原料のゴマフグ卵巣ではみられないため、糠漬け液浸漬中に生じたものと推察される。そこで、この未知のフグ毒関連化合物の構造解析を行う。さらに、TTX分解に及ぼす原料(ゴマフグ卵巣)由来の微生物や酵素の影響を調べる。 今年度は、次世代シーケンスによるフグ卵巣糠漬け製造工程中における微生物群集解析法を検討し、最も効率良く群集解析できる遺伝子領域を明らかにしたが、限られた種類の真菌が多量に存在するために、選択性の高いrRNA抽出法を改良する。そして、フグ毒の減毒に原料由来の微生物の関与が示唆された場合、次世代シーケンサーによる微生物の網羅的解析を実施する。
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Causes of Carryover |
初年度に、次世代シーケンサーによる微生物の網羅的解析を計画していたが、糠漬け製造工程を模した実験で、糠漬け液中の微生物によるフグ毒減毒の可能性が考えにくくなったため、次世代シーケンサーによるフグ毒分解微生物の網羅的解析を延期したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
糠漬け液中の微生物のフグ毒減毒への関与は低いことが示唆されたが、原料や塩漬け工程による影響を検討している。これらの工程で微生物の影響が示唆された場合、次世代シーケンサーによる微生物の網羅的解析を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] フグの安全性2015
Author(s)
長島裕二
Organizer
平成26年度神奈川県ふぐ包丁師衛生講習会
Place of Presentation
神奈川県横浜市
Year and Date
2015-03-12 – 2015-03-12
Invited
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