2015 Fiscal Year Research-status Report
魚類の松果体・脳・下垂体における春機発動関連因子の探索
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26660173
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| Research Institution | Nagasaki University |
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Principal Investigator |
征矢野 清 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環シナ), 教授 (80260735)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | 春機発動 / 初回成熟 / 生殖腺発達 / 脳 / 脳下垂体 / 成熟関連ホルモン / 年齢 / 成長 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまでに解明の進んでいない魚類の春機発動のメカニズムを解明するために、松果体・脳・脳下垂体において発現する春機発動関連因子を探索することを目的とする。春機発動は、年齢と成長の両因子が関わると考えられていることから、この両因子に関わる遺伝子の解析を進める。本年度は、脳で発現し生殖腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌制御に関わる可能性が高いキスペプチンの遺伝子解析をハタ科魚類を用いて行った。
１）カンモンハタを対象魚として、脳内からキスペプチンの遺伝子 kiss 1とkiss 2の単離解析を行った。その結果、kiss 2 遺伝子のクローニングは終了し、その塩基配列が明らかとなった。多くの魚類には kiss 1および kiss 2 の両遺伝子が見つかっているが、本種では kiss 1を単離することができなかった。他のハタ科魚類と比較したところ、キジハタ、クエでは両 kiss 遺伝子が見つかっているが、チャイロマルハタでは本種と同様に kiss 2のみが確認されている。
２）kiss 2遺伝子の相同性は、他のハタ科魚類と高い相同性を示した。また、マダイなどとも高い相同性を示した。現在、リアルタイムPCRによる遺伝子測定系の確立を目指しているが、検索プライマーを用いて、生殖腺発達に伴うkiss 2遺伝子の発現変化を簡易的に調べたところ、成熟の中期において高い発現を示すことが分かった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は春機発動を含む成熟全体を統御する２種の生殖腺刺激ホルモン遺伝子の解析を進め、重要な解析ツールを手に入れた。本年度は、成熟開始スイッチの鍵となるであろうキスペプチン遺伝子解析を行い,kiss 2遺伝子が確認された。しかし、脳内に存在する可能性が高い kiss 1 遺伝子を単離することはできなかった。kiss 1がカンモンハタでは欠落している可能性も捨てきれないものの、その証拠をつかむには至っていない。本年度は、両 kiss 遺伝子の解析を完了されるまでを目標としたが、その目標は達成できなかった。しかし、生殖腺発達の異なる個体を用いて発現解析を行ったところ、生殖腺の発達に伴う遺伝子の発現変化が確認され、kiss遺伝子と生殖腺発達の関係を明らかにする基盤ができた。これは、来年度に行う予定であった研究内容であるが、１年早く成果が得られたことは大きな前進である。また、天然海域から未熟個体を確保できたことも、次年度に向けて大きな前進である。
これらを総合的に判断して、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
春機発動は成長と年齢によって決定される。このうち年齢は日長の年周期を基準として脳内に記憶される可能性が高い。しかし、それを実証した例はない。今後、手に入れた脳内情報伝達物質の遺伝子発現を指標として、以下の点について研究を進める。
１）kiss 1遺伝子の単離、有無の確認を行う。
２）日長の変動に伴う脳内情報伝達物質の遺伝子発現を松果体ホルモンの挙動と関連づけて解析する。
３）成熟の進行に伴う脳内情報伝達物質の遺伝子発現、および成熟魚と未成熟魚におけるこれら物質の遺伝子発現の違いを明らかにする。
これらの研究をとおして、春機発動を制御する脳内因子の特定、春機発動のメカニズム解明に迫る。
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