2014 Fiscal Year Research-status Report
水曜海山に生息する核膜構造が不完全な深海微生物の系統進化学的解析
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26660176
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
八谷 如美 東京医科大学, 医学部, 教授 (30408075)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 電子顕微鏡 / 微細構造観察 / レーザーマイクロダイセクション / 深海 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの細胞内共生時期やその仕組みを解明するために,伊豆・小笠原海域北緯28度33分~35分,東経140度38分~39分の水曜海山近郊における水深1800メートルの深海底から採取した標品を用いて解析し明らかにすることが本研究の目的である。 平成26年度は「深海微生物の構造観察」を中心として解析を行い,あわせて「深海微生物の脂質解析」の準備を行った。具体的な実績は以下のとおりである。 深海生物ウロコムシの筋層に付着しミトコンドリアへの共生過程を示唆する新規微生物の微細構造を観察するため,本年度においては,まず,代表者らで開発したレーザーマイクロダイセクターと透過型電子顕微鏡 (TEM) を組み合わせた新たな実験手法を開発した。なぜなら,近年,蛍光観察などの手法により形態観察手法は飛躍的に発展してきているものの,蛍光観察を行うにはターゲットの遺伝子情報が必要であり新規生物は対象とできないからである。加えて,詳細な微細構造の観察にはTEMによる観察が欠かせないが,TEMは電子線による結像のため,染色剤を用いて可視下に観察した構造物の「色」によるターゲットの特定は行えないという問題もある。このような場合,一般的には免疫電顕などの抗原抗体反応を用いることになるが,そもそも新規生物に既知の抗体があるはずもなく,本実験手法も無意味となってくる。かかる理由により,本研究達成の第一目標は,これらの問題を解決する実験手法を確立することにある。 そこで我々は,独自に開発したレーザーマイクロダイセクションシステムを応用し,可視下に認められた深海底から採取したターゲットを含む直径数μm四方の領域を摘出し,摘出と同時にTEM試料として作成し観察を行う実験系を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「深海微生物の構造観察」を中心として解析を行い,あわせて「深海微生物の脂質解析」を行うに当たり,本年度は構造観察の新規手法を確立した。一方で,脂質解析については準備段階であり,解析系の確立はなされていない。 成果の発表については,微細構造観察新手法の展開から,あらたに複数の研究機関と共同で本テーマに於ける研究会を発足し第1回大会を企画・開催した。また,各学会での招待講演等において成果の発表を行った。 以上のことから,未だ論文発表はなされていないものの,初年度の研究目標はおおむね達成されたものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に確立した微細構造観察の新手法により当該新生物の微細構造観察を引き続き行う。また,連続切片を用いて新手法で観察したデータから3次元構築を行い,膜構造を把握する。脂質解析に於ける解析方法もあわせて確定する。
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Causes of Carryover |
予定していた試薬類の国内在庫がなく,年度内での処理が不可能だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に当該試薬について再見積を行い発注予定である。
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