2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660185
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
三谷 卓美 独立行政法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 主幹研究員 (60371879)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 沿岸漁業管理 / 定置漁業 / 漁業協同組合 / 地域共同体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ブロック水産業普及指導員研修会への参加等を通じて、若年層の就労が近年増加する例も多く、また経営者免許であり経営理念が異なるであろう定置漁場についても現地調査の対象とし、共同漁業権漁場等を引き続く調査現場とすると、整理した。 アンケートや聞き取りができた定置漁場では以下のとおりであった。漁協自営(あるいは地域の会社組織)定置では企業経営に比較し、漁業管理・生産の成果は漁業者と共に地域社会に帰属させる意識が強く、「共同体における伝統的な繋がりや慣習」が「社会における自由な選択や行動」に比べて、成果配分に当たりより高く評価されていた。前者のうちには漁協合併時の株式会社化、および「浜の構成員が、同質、同等でしかも常に同じ業に従事しているという時代から大分たちまして、…かなり多くのところを任せようというその人は出資も多くし、労働の配分も多く受けることもあっていいのではないか」といわれての「当分の間、法人以外の社団は法人とみなす」規定の削除、網組等の株式会社化への経過はあるが、基本的に一家族一株が守られてきており、転出家族からは株の買戻しを検討する組織もある。 就業構造基本調査匿名データの分析では、漁業就業者が離職しにくい条件として、25歳以上の、世帯収入が少なく個人所得が多い、妻帯者、就業継続が長い、自営業主や家族従業者であること、が抽出され、就業して早い機会に漁業機会が与えられ漁業成果を(直接に)受けることが、より多くの漁家子弟をその漁業に繋ぎ止めると考えた。 なお、本課題で得た知見も利用して我が国の漁業管理や生態系保全の制度を分析した図書の書評を担当し、生態系サービスと人間の福利に関して、公正・公平性に係る要素の前提となる「選択と行動の自由」について検討を加えるとともに、沿岸漁業の多面的機能と位置づけられる漁村の海域監視機能、活動に対する成果の分配の考え方に関した報告も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査については、漁村の外からの公正・公平性の視点を含めて定置漁場での聞き取り等を予定通りに進めることができた。 漁業センサスによる沿岸漁業への就業傾向の把握や、その匿名データの利用は水産分野では初めての試みである就業構造基本調査の分析については、順調に進捗している。 これらの点検により、課題はおおむね順調に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
定置漁業とともに共同漁業権漁業等に現地調査の対象を広げ、漁獲機会、漁獲成果の配分に関して漁業協同組合等でのアンケートや聞き取りを実施する。 漁業センサスの集計等を申請し、これを利用して就業構造基本調査からは把握できない漁業種類別沿岸漁業層の構成の変化を捉え、その要因の分析を試みる。 公正・公平性の視点からの漁業管理の規範とルールに就業構造等の変化や6次産業化等が与える影響については、ケーススタディによってでも整理する。 なお調査現地として、定置漁場を取り扱ったのは、既往統計、報告等、また普及指導員研修会場での協議から、若年層の新規就業者が増加しつつある例も多く、また、異なる免許漁業経営(漁協、株式会社等)の異なるであろう経営理念や規範を聞き取るには好適と認めたためである。
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Causes of Carryover |
調査現場の選択、実態予備把握、調査設計の検討では、現地事情に精通する水産業普及指導員等を招へいし、協力を得ることとしていた。これについて、構成員ではないものの願い出て複数のブロック普及指導員研修会等に出席し連携を図ることができたため、旅費の節減が可能となった。 また、直接経費その他については、報告・議論のための関係学会大会参加費のみに止まった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
共同漁業権漁業に焦点を当てて現場調査を行う予定としているが、初年度に実施した定置漁業の調査現場を再訪、あるいは調査事例を加えて、定置漁業と共同漁業権漁業との就労組み合わせ等に関する聞き取りを行う。
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