2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26660200
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
北野 雅治 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30153109)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安武 大輔 高知大学, 自然科学系, 准教授 (90516113)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 葉面結露 / 葉の濡れ / Air irrigation効果 / 葉面飽差 / 水利用効率 / 植物生理生態 / 蒸散 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾燥地作物畑での夜間の活発な放射冷却による結露(空気中の水蒸気の凝結)等によってもたらされる葉の濡れについては,耕地の水収支および植物生産に密接に関わる植物近傍の環境,生理生態反応,水利用効率の観点から議論された経緯はほとんどない.乾燥地作物畑において,夜間の結露等に起因する葉の濡れが続く午前中は,土壌が極度に乾燥しているにもかかわらず葉が萎れないことを認め,乾燥地作物畑における葉の濡れが植物生産における戦略的優位性を持つ可能性を示唆した.本研究では,葉面結露によってもたらされる葉の濡れの効果を「Air irrigation効果(=地上部の環境への水分供給)」として新たに定義付けし,葉近傍の環境に対する物理的な効果,葉のガス交換を通した生理生態的な効果を明らかにするとともに,Air irrigation効果を有効利用した節水農業の可能性を検討することとした. 初年度の26年度は,黄河上流域のトウモロコシ実験圃場において,微気象観測,葉濡れセンサー,赤外線熱画像等による葉面結露の発生,結露量および葉温低下を確認した.さらに室内実験において,葉の表皮細胞や気孔に接する気層(葉面境界層の底層)の湿度の測定法を確立し,葉からの水分損失(蒸散)の駆動力である葉面飽差が,葉の濡れによって著しく減少することを明らかにした.また,リーフチャンバを用いて,乾燥土および湿潤土条件下のトウモロコシの葉の光合成と蒸散に対する高湿空気の影響を測定し,乾燥地作物畑で見られるような乾燥土条件下では,Air irrigation効果によって,光合成が湿潤土条件下と同程度まで増加するとともに,蒸散要求度の減少によって蒸散が低下するために,水利用効率が著しく上昇することを明らかにした.これらの成果を,国内学会で2回,国際学会で2回,口頭で発表するとともに,国際誌に1報投稿した(現在審査中).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,Air irrigation効果の物理的評価と生理生態的評価を計画した.Air irrigation効果の物理的評価として,黄河上流域のトウモロコシ実験圃場の植物群落内において,植物に対する環境側からの蒸散要求度の定量評価に必要な微気象観測,葉濡れセンサーを用いた葉面結露の発生確認,重量法による結露量の実測および赤外線熱画像による葉温低下の確認を行った.さらに室内での実験において,葉の表皮細胞や気孔が接する気層(葉面境界層の底層)の湿度の測定法を確立し,葉表面の極近傍は高い湿度環境が形成され,葉からの水分損失(蒸散)の駆動力である葉面飽差が,葉の濡れによって著しく減少することを定量的に確認できた.すなわちAir irrigationの物理的効果として,葉の濡れによる葉近傍の湿度環境への影響を,環境側からの蒸散要求度の低下として評価した. Air irrigation効果の生理生態的評価として,ポット栽培のトウモロコシを対象に,乾燥土および湿潤土条件下において,「葉の濡れ」によってもたらされる低蒸散要求度が,葉のガス交換(光合成と蒸散)に及ぼす影響をリーフチャンバで評価した.Air irrigation効果によって,乾燥土条件下においても光合成が湿潤土条件下と同程度に維持されるが,Air irrigation効果による低蒸散要求度によって蒸散が低下するために,水利用効率が著しく上昇することを明らかにした.これらの成果を,国内学会で2回,国際学会で2回,口頭で発表するとともに,国際誌に1報投稿した(現在審査中). 以上のように,平成26年度の当初計画である,Air irrigation効果の物理的評価と生理生態的評価をほぼ達成できたと判断される.
|
Strategy for Future Research Activity |
本課題では,Air irrigation効果による「葉の濡れ」が持つ戦略的優位性に着目し,乾燥地作物畑等においてAir irrigation効果の有効利用の可能性を検証するために,まずAir irrigation効果の物理的および生理生態的評価を,植物個体レベルおよび植物群落レベルにスケーリング アップすることを検討する.個体レベルの検証では,トウモロコシ植物個体用の大型チャンバを用いて,葉を濡らした植物個体と濡らさない植物個体葉の光合成,蒸散および水利用効率を比較測定する.また植物体の木部圧ポテンシャルも比較測定し,植物個体の水分状態に対するAir irrigation効果を検証する.植物群落レベルでの検証では,植物群落微気象モデルによる結露量,葉の濡れの持続時間および葉の濡れによる群落内の葉近傍の湿度環境への影響の推定を検討する. さらに,乾燥地における超節水農業を目指した予備的検討として,Air irrigation効果による蒸散要求度の低減効果を,植物群落レベルで定量的に評価する.また,葉の濡れの持続時間を考慮しながら,Air irrigation効果が乾燥地作物畑の水ストレス回避・水利用効率にどのような影響を及ぼすのか検討する. 以上の成果を基に,海外の砂漠化進行地域の灌漑作物畑を対象に,Air irrigation効果を考慮した超節水農業を目指した科学研究費補助金基盤研究(海外学術調査)の申請を行う.
|
Research Products
(4 results)
-
[Presentation] Air irrigation effects of leaf wetting on crop water relations and photosynthesis. I. A hypothesis of air irrigation effects.2015
Author(s)
Kitano, M., Yasutake, D., Nonoshita, M., Yoshizawa, S., Miyoshi, Y., Mori, M., Cho, H., Tagawa, K., Wu, Y. and Wang, W.
Organizer
International Symposium on Agricultural Meteorology ISAM 2015
Place of Presentation
Tsukuba, Ibaraki
Year and Date
2015-03-16 – 2015-03-20
-
[Presentation] Air irrigation effects of leaf wetting on crop water relations and photosynthesis. II.Nighttime leaf wetting and morning humidity gradient.2015
Author(s)
Yasutake, D., Kitano, M., Nonoshita, M., Yoshizawa, S., Miyoshi, Y., Mori, M., Cho, H., Tagawa, K., Wu, Y. and Wang, W.
Organizer
International Symposium on Agricultural Meteorology ISAM 2015
Place of Presentation
Tsukuba, Ibaraki
Year and Date
2015-03-16 – 2015-03-20
-
-