2014 Fiscal Year Research-status Report
近年におけるウシの繁殖性低下は経済形質の選抜によるものか
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26660210
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
万年 英之 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20263395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹崎 晋史 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50457115)
大山 憲二 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70322203)
小林 栄治 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 研究員 (00186727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 繁殖能力 / 黒毛和種 / 産肉形質 / DNAマーカー / 関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
供試動物は兵庫県繁殖雌牛集団を対象とし、兵庫県内で2009年、2010年、2011年に飼養されている兵庫県繁殖雌牛集団から選抜を行った434個体を対象とした。これらの個体は、繁殖3形質 (初産月齢、分娩間隔、子牛生産指数)、および枝肉6形質(枝肉重量、ロース芯面積、バラ厚、皮下脂肪厚、歩留まり、脂肪交雑基準値)の情報を有する。分析対象としたウシの経済形質に影響する遺伝子型多型は、SCD遺伝子、FASN遺伝子、DGAT-1遺伝子、CW-1遺伝子、EDG-1遺伝子の多型とした。 各遺伝子多型におけるアリル頻度は、SCD遺伝子多型では、A型が0.942、V型が0.058、FASN遺伝子多型ではG型が0.994、C型が0.006、DGAT-1遺伝子多型ではK型が0.910、A型が0.089、CW-1のPLAG1遺伝子多型では11型が0.554、9型が0.446を示し、いずれも優良アリルが高い遺伝子頻度を示した。一方で、EDG-1遺伝子多型では、T型が0.271、G型が0.729で、優良アリルではないアリルに高い遺伝子頻度が偏る傾向が観察された。 各経済形質関連遺伝子の効果を測定するために、遺伝子型判定の結果をもとに最小2乗法を用いた分散分析を行った。SCD遺伝子多型では、対象形質のなかで有意差が見られるものは認められなかった。DGAT-1遺伝子多型においては、初産月齢 (P=0.0499) 、ロース芯面積 (P=0.046) 、脂肪交雑基準値 (P=0.001) で有意な差が観察された。EDG-1遺伝子多型においては、皮下脂肪厚において有意水準を満たす結果が観察された (P=0.030) 。CW-1内のPLAG1遺伝子多型においては、枝肉重量でP<0.001という有意差が観察され、脂肪交雑基準値においても有意な差が観察された (P=0.010) 。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・供試動物:平成26年度には兵庫県における黒毛和種の繁殖雌牛集団各434頭を対象とし試料収集を行い、DNA抽出を終了した。 ・個体のデータ収集:これらの個体の繁殖記録及び血縁情報を収集し、繁殖性指標に関する遺伝的能力を推定した。繁殖性指標としては、1) 4歳時生産子牛数(子牛生産指数)、2) 初産月齢、3) 分娩間隔、の3つ、および基本枝肉6形質(枝肉重量、皮下脂肪厚、バラ厚、ロース芯面積、歩留、脂肪交雑評点)のデータを収集し基本統計量を整理した。これら繁殖形質と産肉形質との間を血統情報で連結し、制限付き最尤法により遺伝相関を含めた遺伝的パラメータを推定した。 ・候補遺伝子多型の解析:対象とするDNAマーカーは、EDG1(脂肪交雑)、SCD、SREBP-1、FASN 、FABP4、LXRα (脂肪酸組成)、DGAT1(皮下脂肪厚、ロース芯面積)、CW1-3(枝肉重量)、ELOVL5(枝肉重量、皮下脂肪厚、推定歩留)など合計11遺伝子・多型である。平成26年度は特にSCD、SREBP-1、FASN 、DGAT1、CW1を対象として解析を終了した。 ・遺伝子多型と繁殖・産肉形質との関連解析:各経済形質関連遺伝子の効果を測定するために、遺伝子型判定の結果をもとに最小2乗法を用いた分散分析を行った。DGAT-1遺伝子多型では初産月齢とロース芯面積、脂肪交雑基準値で有意な差が観察された。EDG-1遺伝子多型では皮下脂肪厚、CW-1のPLAG1遺伝子多型では枝肉重量と脂肪交雑基準値においても有意差を検出した。 ・現在までの達成度:これら研究の進捗状況は研究計画通りに進んでおり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・供試動物:平成27年度には岐阜県における黒毛和種の繁殖雌牛集団から約500頭を対象とし試料収集を行い、DNA抽出を行う予定である。現在の所、530頭の血液試料を取集済みである。 ・個体のデータ収集:岐阜県集団においても同様に、個体の繁殖記録及び血縁情報を収集し、繁殖性指標に関する遺伝的能力を推定する。繁殖性指標は、1) 4歳時生産子牛数(子牛生産指数)、2) 初産月齢、3) 分娩間隔、および基本枝肉6形質(枝肉重量、皮下脂肪厚、バラ厚、ロース芯面積、歩留、脂肪交雑評点)の基本統計量とする。これら繁殖形質と産肉形質との間を血統情報で連結し、制限付き最尤法により遺伝相関を含めた遺伝的パラメータを推定する。 ・候補遺伝子多型の解析:対象とするDNAマーカーは、EDG1(脂肪交雑)、SCD、SREBP-1、FASN 、FABP4、LXRα (脂肪酸組成)、DGAT1(皮下脂肪厚、ロース芯面積)、CW1-3(枝肉重量)、ELOVL5(枝肉重量、皮下脂肪厚、推定歩留)など合計11遺伝子・多型である。特に平成26年度に解析が終了しているSCD、SREBP-1、FASN 、DGAT1、CW1を中心として解析を進め、終了次第、他遺伝子多型についても解析を進める。 ・遺伝子多型と繁殖・産肉形質との関連解析:各経済形質関連遺伝子の効果を測定するために、遺伝子型判定の結果をもとに最小2乗法を用いた分散分析を行う。兵庫県集団では、遺伝子多型と繁殖形質の間に効果が認められたのはDGAT-1遺伝子多型であり、対象繁殖形質は初産月齢であった。岐阜県集団においても同様の効果が認められるかを検証する。他の遺伝子多型についても、両集団の比較を行い、最終的にこれらの遺伝子多型が繁殖形質に効果を有するものであるかどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
研究分担者である小林栄治氏(独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構)の分担金において、年度末に研究打合せ出張を予定していたが、都合が悪くなり出張を取りやめたために残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度に同氏が研究代表者との研究打合せを予定しており、その際の出張旅費として充当する。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] The g.841G>C SNP of FASN gene is associated with fatty acid composition in beef cattle2014
Author(s)
Hayakawa K, Ishii A, Yamaji K, Uemoto Y, Sasago N, Kobayashi E, Kobayashi N, Matsuhashi T, Maruyama S, Matsumoto H, Sasazaki S, Mannen H
Organizer
34th International Conference on Animal Genetics
Place of Presentation
Xian, China
Year and Date
2014-07-28 – 2014-08-01
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