2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロバブルと超音波を利用した新しい増感放射線療法の開発
Project/Area Number |
26660233
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
滝口 満喜 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (70261336)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 獣医学 / 超音波 / マイクロバブル / 増感放射線療法 / ソノポレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、小動物の高齢化に伴い放射線治療を受ける動物が急激に増加している。しかし、X線や電子線を用いる放射線治療は、大きく成長したがんや悪性黒色腫、種々の肉腫などに効果が低いという欠点がある。したがって、この放射線抵抗性を克服するためには、巨額の費用を要する重量子線治療装置を導入するか、放射線の効果を増強させる放射線増感剤を開発する必要がある。この点に関して獣医学領域においては、後者の選択がより現実的で実用的であることは明らかである。本研究ではがんに対する新たな治療戦略として、マイクロバブル(MB)と超音波を利用した新しい増感放射線療法の可能性に挑戦し、MB存在下での超音波照射に引く続く放射線照射が放射線誘発アポトーシスの増強効果を示すかどうかを明らかにすることを目的とする。 マウス扁平上皮癌細胞を60mmのペトリディッシュにて培養し、MBとしてソナゾイド(第一三共、東京)を0.1%で加えて培養液を満たし、パラフィルムでシールし逆さにしてバブルの細胞への接着を促した後、その状態で水槽中にて下から超音波を照射した。超音波照射には円形型プローブを用い、超音波発生装置(テクトロニクス、AFG1022)、高周波増幅器(Thamway T145-5315A)にて1MHz、0.6 Vpp、30秒間、照射した。照射後、すみやかにShimazu HF-350(島津製作所、京都)を用い、2 mm厚アルミフィルターを使用して2-15GyでX線を照射し、コロニー形成法により細胞増殖への影響を調べた。その結果、増感比1.1と弱いながらも増感作用が認められた。さらに活性酸素種の産生とアポトーシスへの影響を調べたところ、MB存在下で超音波照射後、放射線照射を併用することで活性酸素種の産生ならびにアポトーシスが亢進していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の取り組みにおいて、コロニー形成法により細胞生存率を評価したところ、マイクロバブル(MB)存在下超音波照射に引き続き放射線を照射することで、増感比が1.1と弱いながらも放射線増感作用が認められた。また、放射線増感作用の機序を明らかにする目的で、フローサイトメーターを用いて活性酸素種の産生とアポトーシス細胞の定量を評価したところ、MB存在下超音波照射に引き続き放射線を照射することで、活性酸素種の産生が亢進し、アポトーシスが増加することが示唆された。以上のことから、今年度の研究目的の達成度については、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにマイクロバブル(MB)存在下超音波照射に引き続き放射線を照射することによる細胞生存率の増感比が1.1と弱いことから、高周波増幅器の出力条件を変更して、再度、同様の実験を行うことで、MB存在下超音波照射に引き続く放射線照射が放射線増強作用を示すことを明らかにする。また、その機序として、活性酸素種の産生亢進とアポトーシスの増強効果が示唆されたことから、こちらについても、再度、新たな条件で実験を繰り返し、検証していく予定である。 また、in vitroでの解析後は、マウス皮下腫瘍モデルを用いたin vivoでの検討を予定している。
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Causes of Carryover |
当初は平成26年度に造影超音波検査用リニア型プローブの購入を予定していたが、平成26年度内の超音波プローブの購入を見送ったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養細胞の形態的変化を画像として保存しておく必要性があることから、平成27年度に顕微鏡用デジタルカメラ一式(約57万円)の購入を予定している。
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