2014 Fiscal Year Research-status Report
高機能型タンパク質凝集体の生産を可能とする画期的システムの構築
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26660268
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
早川 徹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (30313555)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タンパク質生産 / ペプチドタグ / 凝集体形成 / Cry4Aa / Bacillus thuringiensis / 大腸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究グループではBt菌が産生する殺蚊トキシンCry4Aaに由来する新規のペプチドタグ(4AaCter)を開発している(特許第46042321号、US patent No. 8865428)。4AaCterを連結したタンパク質は大腸菌でアルカリ可溶性の凝集体を形成する。凝集体形成には4AaCter内部で高度に保存されている配列(Block7, 33アミノ酸)が重要な役割をもつと考えられるが、その詳細は未だに明らかでない。 本年度はBlock7(B7)による凝集体形成の仕組みを明らかにする目的で、B7配列のN末端及びC末端欠失変異体を構築して、それらと連結したタンパク質(グルタチオン S-トランスフェラーゼ,GST)の凝集体形成率の変動を観察した。興味深いことにB7配列をN末端側から順次欠失させた5種の変異体(N807, N812, N817, N822, N827)において、凝集体形成率は2段階に分けて減少した。同様にC末端側から順次欠失させた4種の変異体(C809, C814, C819, C824)において、凝集体形成率は3段階に分けて減少した。これらの結果から、B7配列に凝集体形成に関与する機能構造が2カ所存在することが示唆された。そこで本研究では凝集体形成に関与するB7配列内の機能構造(F802-K809、及びL822-S829)を便宜上、MIF1及びMIF2と呼ぶことにした。4AaCterに由来するB7配列を他のCryトキシンのアミノ酸配列と比較解析した結果、MIF1及びMIF2はB7配列内で最も相同性の高い領域を挟むように、比較的多様な配列の領域内に位置していた。MIF1を含むGST融合変異体(C809)とMIF2を含むGST融合変異体(N827及びN822)の結合を水晶発振子マイクロバランス測定法(QCM法)で解析した結果、この2カ所がホモもしくはヘテロに結合することが凝集体形成に関与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4AaCterによるタンパク質凝集体の形成機構を明らかにするため、本年度はB7配列をN末端及びC末端から欠失させた9種類の変異体を構築した。変異体が示す凝集体形成能の比較解析から凝集体形成に関与する2つの領域(MIF1及びMIF2)を特定するに至った。QCM法による解析の結果、MIF1を含む変異体は同じMIF1を含む変異体及びMIF2を含む変異体と強く結合すると考えられ、これら2カ所の領域がホモもしくはヘテロに結合することで凝集体が形成されると考えられた。MIFの結合について、結果の信頼性を上げるために追加の実験が必要となっているが、研究は順調に進展していると考えられる。 一方B. thuringiensisに由来するシャペロン様P20を安定的に発現する大腸菌の作出について、人工P20遺伝子の作製が未だに完了できていない。これは配列に特殊な構造(高次構造の形成?)が存在するためと考えており、遺伝子配列のデザイン変更を含めた改良を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は欠失変異体の構築を通してタンパク質凝集体の形成に関与する機能構造(MIF1及び2)を同定した。またQCM法を用いた解析から、MIF1がMIF1及び2と強く結合することが示唆された。しかし実験で用いたGST融合タンパク質には標的とする配列(MIF1及び2)以外の構造が多く含まれており、この結果がアーティファクトである可能性が除けていない。よってこの可能性を排除するため、MIF1及び2ポリペプチドを新規に合成してペプチド間の相互作用、場合によってはペプチドと大腸菌タンパク質の相互作用も詳細に解析する。 シャペロン様P20人工遺伝子の構築を進め、P20を安定発現する大腸菌の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していたシャペロン様P20人工遺伝子の構築が完了できておらず、実験が次のフェーズに移行できなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
P20を安定発現する大腸菌を構築するため、オリゴヌクレオチドの合成や目的タンパク質発現に使用するベクターと異なるレプリコンを持つベクターの購入等に使用する。
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Research Products
(5 results)