2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660272
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
早川 洋一 佐賀大学, 農学部, 教授 (50164926)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 寄生蜂 / 脱出誘導因子 / 瀕死マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
カリヤコマユバチは、宿主アワヨトウへの寄生の際、数十個の卵を産み込み、孵化した幼虫は寄生後11日目にほぼ一斉に宿主体外へ脱出し始める。本研究の端緒は、宿主幼虫からのカリヤコマユバチの脱出行動における偶然の発見にあった。脱出直前の宿主幼虫をたまたま腹部中央で結紮したところ、寄生蜂幼虫は必ず後部から脱出を開始することを発見した。脱出直前の宿主体液を別の結紮個体前部に注射すると、前部からの先行脱出へ切り替わることも確認した。さらに、この寄生蜂脱出誘発因子は、未寄生でも高温や各種ストレスによって瀕死状態に陥った宿主幼虫の腹部神経節から血中へ分泌される可溶性分子であることを突き止めた。本研究の最終目標は、この寄生蜂脱出誘発分子の構造・分泌動態・生理活性について明らかにすることであり、今年度は、特に、当該分子の精製とその構造決定力点を置いて研究を進めた。 寄生後11日目(寄生蜂が宿主から脱出する日)のアワヨトウ幼虫から体液を採血し、速やかに等量の―20oCに冷やしたアセトニトリルと混合し、遠心上清を真空乾燥した。この再溶解液は、宿主幼虫の結紮腹部への注射による前方からの寄生蜂幼虫脱出を誘起した。この再溶解液を出発材料として、アミノプロピルカラム1回、ODSカラム3回の合計4段階からなる逆相系HPLCによって脱出誘導因子の完全精製に成功した。当初の予想では、活性因子はペプチド性に分子としていたが、精製を進める過程で、恐らく非ペプチド性の低分子有機化合物であることが分かった。精製品をLC-MS/MSによる質量分析、さらに、HとCのNMR分析によって構造解析を行った結果、分子量が223のN-アセチルチロシンであることが判明した。昆虫においても、また、哺乳類においてさえ、その存在さらには生理機能の研究等がほとんどなされていない修飾アミノ酸が脱出誘導因子であったことは極めて興味深い結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
“研究実績の概要”でも触れたように、これまでの第一の研究成果は寄生蜂脱出誘導因子の単離・精製とその構造決定の成功である。さらに、この活性因子の分泌機構の解析においても大きな進展があった。すなわち、当初、活性因子は腹部後方の神経節から分泌されると予想していたが、解析の結果、神経節から分泌される因子は今回構造が決定されたN-アセチルチロシンではなく、N-アセチルチロシンの合成・分泌を促す活性化因子であることが明らかになった。しかも、この因子は腹部後方の神経節から分泌され、脂肪体を活性化してN-アセチルチロシンの合成・分泌部位を促すことが判明した。つまり、腹部後方に位置する神経節から活性化因子が分泌されるため、その周囲の脂肪体でN-アセチルチロシンの合成・分泌が活性化し、後方から寄生蜂幼虫の脱出が開始されるものと解釈できる。 次に、この活性化因子を分泌する神経節の同定を試みた。アワヨトウ幼虫の中枢神経系は、脳とそれに連なる11個の神経節から構成される。今回、生理活性(寄生後11日目の宿主アワヨトウ幼虫を腹部中央で結紮し、その前部へサンプルを注射し結紮前方からの寄生蜂幼虫脱出を誘起する活性)を指標に、活性化因子の起源を分析した結果、脳と第9神経節に活性が存在することが明らかになった。すなわち、脳で合成された活性化因子が第9神経節から分泌されるものと解釈できる。なぜ、第9神経節が分泌器官となるのか?さらには、この活性化因子はどのような構造の分子か、興味深い謎が複数残る状況ではあるが、これらの新知見を得たことは評価に値するものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
大きく二つの研究を重点的に促進する。 (1)脳・神経節由来のN-アセチルチロシン合成・分泌活性化因子の構造解析 摘出した寄生後11日目のアワヨトウ幼虫脳と神経節の50% アセトニトリル抽出物には、寄生蜂脱出誘起活性が存在することは確認できている。したがって、この抽出液を出発材料に精製を進める。現時点では、この因子がペプチド性の分子か否かについての明確な証拠は揃っていない。しかし、N-アセチルチロシン同様の逆相系カラムを用いるHPLCによって精製を進められることは確認できている。したがって、最初はODSカラムを用いて粗分画を行い、次に、シアノプロピルあるいはアミノプロピルカラムやフッ素化フェニルカラムを用いて精製を進める。最終的に、精製品についてはLC-MS/MS質量分析によって大凡の構造を推定し、ペプチドと予想された場合はde novoペプチドシーケンス分析を行って構造を決定する。また、非ペプチド性の分子と判断された場合は、H-とC-のNMR分析によって構造を決定する。 (2)脂肪体におけるN-アセチルチロシンの合成・分泌機構の解析 単離した脂肪体のin vitro培養系に寄生後11日目のアワヨトウ幼虫脳・神経節抽出液を添加し、N-アセチルチロシンの合成経路の解析を進める。具体的には、N-アセチルチロシンはチロシンに対しN-アセチルトランスフェラーゼが作用して合成されることから、N-アセチルトランスフェラーゼ活性への脳・神経節抽出液の作用機構の解析となる。作用が、転写調節あるいは翻訳後調節レベルによるものか、を速やかに明らかにし、前者であれば、転写調節因子の解析、また、後者であれば、共役タンパク質の有無等について分析を進める。また、一連のin vitro解析を行った後は、それらの成果をin vivoに還元して分析を深める。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Immunoevasive protein (IEP)-containing surface layer covering polydnavirus particles is essential for viral infection.2014
Author(s)
Furihata, S., Tanaka, K., Ryuda, M., Ochiai, M., Matsumoto, H., Csikos, G. and Hayakawa, Y.
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Journal Title
J. Invertebr. Pathol.
Volume: 115
Pages: 26-32
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Gain of long tonic immobility behavioral trait causes the red flour beetle to reduce anti-stress capacity.2014
Author(s)
Kiyotake, H., Matsumoto, H., Nakayama, S., Sakai, M., Miyatake, T., Ryuda, M., Hayakawa, Y.
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Journal Title
J. Insect Physiol.
Volume: 60
Pages: 92-97
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Switching between humoral and cellular immune responses in Drosophila is guided by the cytokine GBP.2014
Author(s)
Tsuzuki, S. Matsumoto, H., Furihata, S., Ryuda, M., Tanaka, H., Sung, E-J., Bird, G.S., Zhou, Y., Shears, S.B., and Hayakawa, Y.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: 4628
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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