2014 Fiscal Year Research-status Report
ファミリー131に属する機能未知酵素がバイオマス分解に果たす役割の解明
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26660277
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
殿塚 隆史 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50285194)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | バイオマス / 担子菌 / 糖質加水分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、バイオマス分解に関わる機能未知タンパク質糖質分解酵素ファミリー131(以下GH131)および関連酵素の構造と機能の解析を目的とする。担子菌Coprinopsis cinereaには、2つのGH131に属するタンパク質、CcGH131A、CcGH131Bが存在する。これまでに、CcGH131A触媒ドメインの立体構造を決定しており、平成26年度は以下の研究を行った。 1 CcGH131A全長およびCcGH131Bの遺伝子の取得と大腸菌における発現系の構築:それぞれのcDNAをC. cinereaより取得した。両タンパク質とも大腸菌の発現プラスミドを構築し、得られた組み換えタンパク質はCcGH131A全長およびCcGH131Bともにアフィニティークロマトグラフィーによって精製し結晶を得た。また関連する糖質分解酵素についても同様の手法で結晶を作製し、立体構造を解析した。 2 蛍光光度計によるCcGH131A-ΔCBMおよびCcGH131A全長と多糖との相互作用の解析:励起280 nm、蛍光330 nmの条件で、カルボキシメチルセルロースおよびキシランの溶液を滴定することにより蛍光光度の変化を測定した。その結果、カルボキシメチルセルロースに対しキシランの方が同じ濃度で5倍程度蛍光光度を変化させることが判明した。 3 市販セルラーゼ製剤との協調効果の検証:CcGH131A-ΔCBMおよびCcGH131A全長存在下で市販セルラーゼ製剤をいくつかの多糖に作用させたが、顕著な効果は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、大腸菌の発現系については、CcGH131A全長およびCcGH131Bについて構築に成功し結晶が得られ、また、関連する糖質分解酵素の立体構造を決定した。本研究は挑戦的萌芽研究の名のとおり、特にタンパク質の機能探索については難しい。協調効果の検証では顕著な効果は確認できなかったが、蛍光光度計による測定では、CcGH131Aはセルロースよりはむしろキシランに対して特異性がある傾向が示された。GH131で唯一性質が報告されているPodospora anserina由来タンパク質PaGluc131Aは、β-グルカンを分解することが示されており、今回の研究において、CcGH131AはPaGluc131Aとは異なる特異性を持つことが明らかになった。このように、機能探索でもある程度の成果は得られており、学会発表には至らなかったものの、研究の進行自体はおおむね順調であるため、標記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1) CcGH131A全長およびCcGH131Bの立体構造解析:これらは平成26年度の研究で結晶が得られていることから、X線回折データを収集して立体構造を決定することにより、機能推定の手掛かりとする。また、関連する糖質分解酵素についても、同様に、構造機能相関の研究を進める。 2) 酵母での発現系の構築:GH131タンパク質で唯一性質の報告されているPaGluc131Aは、酵母Pichia pastorisで全長を発現させたタンパク質のみ、β-グルカン分解活性が検出されたと報告されている。このことから、CcGH131AおよびCcGH131Bにおいても同様に酵母での発現系を構築し、性質を調べることにより、これらのタンパク質の機能を明らかにする。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、発現系の構築は順調であったものの、協調効果の検証では顕著な効果は確認できなかったなど機能の探索においては学会発表を行うだけのまとまった結果とはならなかったため、学会発表を行っていない。このため、旅費に関する経費がなく次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、タンパク質の構造と機能に関する研究結果をあわせて学会発表を行う予定であり、未使用額は学会発表経費に充てることとする。
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Research Products
(2 results)