2014 Fiscal Year Research-status Report
方法論のパラダイムシフトによる優れた有機農法のプロファイリング
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26660282
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, 持続可能な社会のための決断科学センター, 准教授 (30264104)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機栽培 / 土壌水分 / 土壌微生物相 / 畑地植生 |
Outline of Annual Research Achievements |
9月2日、10年以上有機栽培を行ってきた畑地土壌1平方mに、細断して1kgの米ぬかボカシと混合した野菜廃棄物15kgを投入し、防水シートで被覆して40日間かけて分解させた発酵区と、これに約10Lの水を加えて同じ期間かけて分解させた腐敗区を設置し、ニンジン(Daucus carota)‘黒田五寸’をは種して12月31日まで約11週間育成して収穫した。有機物分解中およびニンジン育成期間中の土壌中のpH、EC、硝酸態窒素の変動に大きな違いはなく、収穫したニンジン搾汁の糖度、硝酸態窒素、カルシウム、アスコルビン酸含量に差はなかったが、搾汁中のマグネシウム含量は発酵区の方が有意に高くなった。収穫時に、ニンジンの肥大根にキャロットフライ(Psila rosae)の幼虫による食害が見られた。その被害個体の割合は腐敗区69%、発酵区28%、肥大根当たりの食痕数は腐敗区2.7、発酵区0.63となり、腐敗区の被害が有意に大きかった。また、2区の搾汁残渣をプラスチックシャーレに入れて室内に放置したところ、腐敗区の残渣は糸状菌の発生が早く、腐敗臭が強かった。肥大根におけるマグネシウム含量の区間差は、忌避的作用を促す二次代謝物質の生成量に影響し、その結果、キャロットフライ幼虫の被害に差が生じたと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題採択直前に学内に新設された教育大学院プログラムに異動し、新規教育プログラムの確立と運営を主たる業務として従事したため、本研究を遂行するためのエフォートが期待していたよりも少なくなった。したがって今年度は、教育業務に対するエフォートを多少減らしながら学内外の研究協力者を得ることにより、実験と調査の遂行に支障のないように配慮しつつ本課題を推進していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、初年度に調査することができなかった有機物分解過程における土壌水分と土壌の生物的・非生物的環境との関係を明確にする。 すなわち、「発酵型」「腐敗型」有機土壌を水分制御して作成し、有機物分解過程の土壌水分、温度、硝酸態窒素、温度、pHの推移を経時的にモニターしつつ、有機物分解後の土壌中の微生物多様性・活性を比較する。その後、これら2区の土壌を用いて、数種類の野菜を育て、内生成分や食植生昆虫の食害抵抗性を比較する。 また、昨年度は、有機栽培を実施している圃場において、土壌水分の違いがそこに生育する雑草の種類と成長量に影響している様子がうかがえた。そこで、有機栽培ほ場における、土壌水分と雑草の成長、土壌の物理性(土壌硬度を含む)、理化学特性との間の相関関係を明らかにしつつ、実験的に作り出した「発酵型」土壌と「腐敗型」土壌に、水分条件の異なる畑地に生育している数種の雑草の種子をは種し、その後の成長に差が生じるかどうかを調べる。 以上の実験を繰り返すことにより、有機物分解過程における土壌水分条件の違いが土壌の生物・非生物的環境やその後の植物の成長に及ぼす影響を明らかにしていく。
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