2015 Fiscal Year Research-status Report
方法論のパラダイムシフトによる優れた有機農法のプロファイリング
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26660282
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
比良松 道一 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (30264104)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機栽培 / 土壌水分 / 土壌硬度 / 土壌微生物 / 品質 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、有機栽培と慣行栽培との間で微生物の多様性や活性に違いがあるのか、もし違いがあるとすればそれが野菜の品質に影響を与えるかに着目して実験をおこなった。 5月22日、福岡県朝倉市に位置する農業高校跡地の耕作放棄地6平方m(2mx3m)に、細断して5kgのぼかしと混合した野菜廃棄物66kgを投入後、防水シートで雨の侵入を防ぎながら85日間かけて分解させた有機栽培区、および、化成肥料(NO3、P、K、各15kg/平方m)をは種時に投入した同面積の慣行栽培区を設置した。8月18日にニンジン(Daucus carota)’黒田五寸’をは種して11月24日まで14週間育成し、土壌の水分、pH、EC、硝酸態窒素、硬度の経時的な変化、および、収穫時の土壌微生物の多様性・活性値、ニンジンの肥大根重量、肥大根搾汁の食味を比較した。 土壌の水分、pHに大きな違いはなく、EC、硝酸態窒素の変動は異なるパターンを示したが、ニンジン肥大根の収穫時重量に違いはなかった。有機栽培区におけるニンジン収穫時の土壌硬度は、表層から7cmまでが慣行区よりも有意に小さく、土壌中の微生物多用性・活性値は慣行栽培区の1.15倍であった。また、発酵区の肥大根搾汁は慣行区に比べて甘くて苦みが少なく、香りが少なかった。 有機栽培土壌では、慣行栽培土壌より多様な微生物が活発に活動しており、それがニンジンの食味に有為な差をもたらしていると考えらる。また、実験区間の差が極端に大きくなかったのは、耕作放棄地土壌の微生物多様性・活性の初期値が比較的高かったからではないかと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
再現性の高い実験条件を探るために予想以上に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年にわたる実験を通じて、有機物投入前の土壌微生物の多様性・活性が、栽培する野菜の品質に大きく影響することが見えてきた。そこで、研究の最終年度にあたる次年度では、土壌微生物の初期条件も含めて分析するための包括的な実験を展開する。 すなわち、土壌微生物の多様性・活性が高い土と低い土を用意し、それぞれの土を用いて「発酵型」「腐敗型」有機土壌、および、化学肥料を投入した土壌の3処理区について、有機分解過程の土壌の硬度、水分、温度、硝酸態窒素、pH、土壌微生物の多様性・活性の推移を経時的にモニターする。 その後、各実験区に2~3数種類の野菜を栽培し、収穫時の可食部の品質(抗酸化力、食味)、および、可食部を餌として飼育した植食性昆虫の成長を比較する。さらに、すべての区に対して野菜を栽培しない実験区も加え、そこに発生する雑草の植生も比較する。 以上のデータをまとめ、有機栽培における土壌微生物の多様性・活性が栽培作物の品質に及ぼす影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度は、研究の再現性を高めるべく、有機野菜の品質を大きく左右する要因を探り、そこで明らかになってきた影響力の大きい要因を加味した実験計画を再考するために、経費よりも時間を要した。今後、新たに展開する実験において増えると予想される分析経費を十分に確保するために、当該年度の経費残額を次年度に繰り越すべきであると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最も使用額が増えると予想される土壌中の微生物多様性・活性の測定、および、野菜可食部における抗酸化成分の測定を外注するための経費として使用する予定である。
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