2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト染色体断片化による染色体外遺伝因子の新生と、革新的エピソームベクターの創成
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26660293
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
清水 典明 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10216096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 染色体外因子 / エピソーム / ベクター / 遺伝子増幅 / 異種間細胞融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、ヒト細胞と齧歯類細胞を融合させると、ヒト染色体が特異的にPCCを生じて断片化すること、および、ヒト染色体の一部から安定な染色体外因子が形成されることを示唆する結果を申請段階で得ていた。このような染色体外因子はDMと呼ばれて、がん細胞の悪性化に重要な意味を持つ。本計画では、このようなDMの形成と性状を理解し、それをエピソームベクターの樹立に応用する道を拓くことを目指す。本年度には、Alu (+)のヒト由来配列が、DMでのみ検出されるような融合細胞クローンを多数得ることができた。このようなDMは、c-myc (+)のものと(-)のものがあったが、ともに新たに形成されたDMであることが示唆された。このようなDMの形成は、低酸素(3%)状態でより効率よく形成された。このことは、生体内のがん細胞ではDMを多く持つこととよく対応していた。このような新規DMは、ヒトがん細胞に見られるDMと同様の頻度で、凝集して微小核を形成したことから、両者が類似していることが示唆された。さらに、このようにして得られた、Alu (+)/c-myc(-)であるDMを持つマウス細胞クローンから、ゲノムDNAを抽出し、ヒトマイクロアレイにハイブリして検討した。その結果、解析した3クローンの全てについて、8q24、7p15、13q21がクローンごとに異なる程度で検出されたほか、5p15, 6p25がクローン特異的に検出された。これらの殆どは、もともとのヒト細胞が持っていたDMで増幅している領域とは一致しなかったことから、新たに生じたDMであることが強く示唆された。さらに、8q24はc-mycが局在し、ヒトがんで頻繁にDMを形成する領域であるが、クローンのマイクロアレイでは8q24のc-myc以外の領域が増幅していた。これらのことから、8q24のc-myc以外の領域に、DMとして細胞内で維持されるのに必要な配列が存在している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請段階では、萌芽段階にある実験結果をもとにして、ステップ1)新規にDMが形成される過程と、形成されたDMの性状を理解する、ステップ2)新規に形成されたDMの由来と配列を知る、ステップ3)以上の結果を利用して、ゲノム由来のエピソームベクターを開発する道を拓く、ことを計画した。この中で、ステップ1)は1年間で大きく前に前進し、ほぼ目的を達成した。またステップ2)も、マイクロアレイ解析によりほぼ目的を達成した。ステップ3)は、今後の課題である。単年度で、これだけ大きく進歩できたことは、萌芽段階の結果をもとにした挑戦的な計画であっただけに、極めて高く評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従い、そのステップ1と2の完成度を高める。さらに、ステップ3を実行する。ステップ3のために、当初計画を含めて2種類の方法で進める。その第一は、ヒト由来新規DMを持つマウス細胞クローンについて、そのようなDMを濃縮している微小核を精製する。そのような微小核からDNAを抽出し、それをもとにして、IR/MAR配列とd2EGFP遺伝子を持つプラスミドをベクターとしてゲノムライブラリーを調製する。それをハムスターCHO DG44細胞へ導入し、形質転換効率が高く、d2EGFPを高レベルで発現するような細胞を選択することで、エピソーム状態で維持されている細胞を得る。そのような細胞から、ヒト由来の配列を解析する事により、エピソーム状態で維持されるのに必要な配列を決定する。一方、当初計画には含まれていなかったが、以下の方法も検討する。すなわち、複製に必要なIR/MAR配列の他に、宿主染色体への付着に必要な装置を人工的に付加し、その効果を検討する。そのために、EBP2-LacR融合遺伝子、および・あるいは、histone H1-LacR融合遺伝子を細胞内で発現させた細胞について、LacO repeat配列とIR/MAR配列を持つプラスミドを細胞に導入する。エピソーム状態での維持は、PFA固定した細胞でのFISH解析により検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画にあった「ヒト染色体に由来する染色体外因子(DM)を持つマウス細胞」のクローンを、計画通り得ることができた。これは大変重大な成果である。一方、この細胞のゲノムDNAについてマイクロアレイ解析を行うことは計画上不可欠であり、多額の費用が必要となる。このような解析について、初年度のみでは行うことができず、2年目にも行うこととなったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に得られた「ヒト染色体に由来する染色体外因子(DM)を持つマウス細胞」のクローンのゲノムDNAを用いて、マイクロアレイ解析を行う。また、本計画遂行には、2年目に多額の消耗品を必要とするため、その購入に充当する。
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Research Products
(2 results)