2014 Fiscal Year Research-status Report
多孔質無機化合物の特異なナノ空間を活用する高度制御合成法の開発
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26670002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
赤井 周司 大阪大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60192457)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 固定化触媒 / 多孔質無機化合物 / ナノ空間 / メソポーラスシリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
廃棄物削減の観点から、種々の無機材料やポリマーに固定化した(Lewis)酸、(Lewis)塩基、金属触媒等の開発が近年、極めて活発に行われている。しかし、その殆どは従来の均一系触媒と類似の結果を与え、固定化によって初めて発現する特徴的な反応は少ない。本研究では、多孔質無機化合物メソポーラスシリカ (MPS)がもつ特異なシラノール表面、高極性環境、ナノサイズ空間を最大限に活用し、反応加速、反応位置や立体化学の制御、分子サイズふるいなどの反応制御を行う。また、MPS内部にオキソ金属やLewis酸を固定化した新しい触媒を作成し、種々の反応に用いる。 平成26年度は研究実施計画に従い、以下の成果を得た。 1.細孔径の大きさが異なる3種のMPS(細孔径2, 3, 4nm)にオキソバナジウムを固定化したV-MPS を作成し、光学活性アルコールのラセミ化速度を比較した。その結果、分子サイズが1.5nmを越える大きなアルコールでは、細孔径サイズが大きいほどラセミ化速度が大きいことが分かった。また、高極性基質ほどラセミ化が速いことも分かった。さらに、高極性基質は、MPS内部に集積しやすいことが判明した。 2.上記3種のV-MPSとリパーゼを併用することで、多様なアルコールの動的光学分割が進行し、90%以上、90%ee以上の光学活性エステルを得た。この時、基質サイズに適した細孔径を有するV-MPSを選択することで、収率や光学純度を向上できることがわかった。 3.他のオキソ金属をMPSの細孔内に固定化した新規触媒の合成を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のうち、細孔径の大きさと細孔内部の極性が触媒活性に及ぼす効果が実験事実から明らかになってきた。これによって、MPSの特異な反応加速効果を理解する手だてが得られた。また、その特徴を活かして、リパーゼとの併用によって動的光学分割の基質適用性を拡張することができた。これらの検討を主に行ったために、他のオキソ金属をMPSの細孔内に固定化した新規触媒の合成が遅れているが、これから鋭意検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.引き続き、他のオキソ金属をMPSの細孔内に固定化した新規触媒の合成を進め、これを種々の反応に用いる。 2.狭隘な反応空間での分子運動の不自由さを活かした位置、立体、および官能基選択的反応を開発する。
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Causes of Carryover |
残額は12円であり、実質的には年度当初の予算を使い切った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合算して実験に必要な薬品を購入する。
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