2014 Fiscal Year Research-status Report
P糖タンパク質の薬剤排出効力の制御メカニズムの構造薬理学
Project/Area Number |
26670014
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90204487)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 構造生物学 / 受容体・膜輸送 / 薬理学 / X線結晶学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.P糖タンパク質ホモログと基質の共有結合複合体の結晶化 P糖タンパク質ホモログと輸送基質との共有結合性複合体を調製するため、基質結合部位近傍にCys残基を導入し、SH基と反応性の高い官能基を導入した基質アナログを用いて共有結合させた。まず始めに、元々存在する3つのCys残基をSerおよびAlaへ改変した。しかし、構造が不安定になった部位が見つかったことから、その部位を各種アミノ酸残基に改変したところLeuへの改変が構造安定化に寄与することが判明した。これらの結果を組み合わせることにより、目的通りCys-less変異体を調製することができた。Cys-less変異体を用いて、ドッキングシミュレーションから基質結合部位に近いことが予想される部位にCysを導入しマレイミド基を有するローダミン誘導体と反応させたところ、特異的に反応する残基を2ヶ所見いだした。そこで、それぞれの変異体と化合物を共有結合させた複合体を結晶化したところ、1つの変異体で結晶が得られた。X線解析実験により結晶の分解能は3.3オングストロームであることが判明した。 2.P糖タンパク質ホモログの部位特異的変異体の取得と機能解析 QA変異体について、Ala以外のアミノ酸残基への改変を行い、基質輸送活性とATPase活性への影響を調べた。その結果、Alaと同様Val変異体Gly変異体でもATPase基礎活性の上昇が観測された。しかし、Leu変異体では野生型と同様であり、アミノ酸側鎖の長さが重要であると考えられた。ところが、Glu変異体では、ATPase基底活性の低下が観測された。そこで、ATPaseのpH依存性を測定したところ、pHの低下とともに、ATPase基礎活性が野生型の値まで増加した。このことから、Glu側鎖のカルボキシル基の解離が基底活性の低下を引き起こしている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ABC多剤排出型トランスポーターP糖タンパク質の薬理学的挙動の特徴である、ATP加水分解活性が輸送基質(アゴニスト)によって十数倍上昇する現象を分子の立体構造を基に解明することである。そのために、基質輸送経路にある特定のGln残基をAlaに改変したGA変異体が基質を加えないにもかかわらず、すでに基質を加えた場合と同程度までATPaseが活性化された事実を足がかりとして探索を進めるというユニークな方法をとっている。 これまでの研究から、このGln残基は、ABCトランスポーターが「内向型構造」から「外向型構造」へと構造変化する際の支点となっていることを示唆することが、構造解析と機能解析の結果から得られて来た。さらに、Glnと相互作用するアミノ酸残基も特定され始めており、予想外の新事実が次々と明らかになるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
QA変異体の解析からGln残基と側鎖間で直接相互作用しているArg残基とGlu残基、そして、それらの相互作用を補強するPhe残基を見つけることができた。そこで、それらの相互作用を結晶解析により直接観測するための研究を計画に加えることにした。このことにより、特徴的なGln残基が司る役割を立体構造上で直接補足することが可能になるものと期待される。 当初予定した計画は順調に進んでおり、この研究を新たに加えても支障はない。
|