2015 Fiscal Year Annual Research Report
P糖タンパク質の薬剤排出効力の制御メカニズムの構造薬理学
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26670014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加藤 博章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (90204487)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 構造生物学 / 受容体・膜輸送 / 薬理学 / X線結晶学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多剤排出輸送体P糖タンパク質にエネルギーを供給するATP加水分解活性は、輸送基質(アゴニスト)によって十数倍上昇するという特有の分子挙動を示す。我々は、新たに立体構造を解明した真核生物のP糖タンパク質euP-gpの基質輸送経路にあるGln残基をAlaに変換すると、ATP加水分解活性が恒常的に活性化されるものの、薬物排出能が大きく低下することを発見し、そのGln残基がATP加水分解と能動輸送を共役させるための重要な役割を果たしているのではないかと考えた。そこで、euP-gpと基質との複合体の立体構造を明らかにすることにより、問題のGln残基と基質結合あるいは基質輸送との関係を明らかにすることを試みた。また、GlnをAla以外の多様なアミノ酸残基に改変してGlnの役割を機能解析からも明らかにすることを実施した。 その結果、そのGln近傍のGlnまたはMet残基をCysに改変した変異型euP-gpとローダミンにマレイミド基を導入してCysと共有結合を形成できるように化学修飾した化合物を用いて安定な複合体を調製してX線結晶解析を実施したところ、基質は問題のGln残基とは直接接してはいないと考えられた。一方、ヌクレオチドと結合した外向型状態のeuP-gpの立体構造解析を実施することにより、Glnが対面する二量体の相手方サブユニットのAla残基とファンデルワールス相互作用することを見いだした。そこで、GlnをAla以外のアミノ酸残基に改変した変異型の機能解析を実施したところ、側鎖が短くなると基質を加えなくともATPaseが上昇し、長くなるとその上昇は見られなかった。また、いずれの場合も変異型の薬物輸送能は低下した。このことは、Glnの役割は、輸送装置の動きを抑制することでスプリング状のαへリックスにトルクを蓄積し、そのエネルギーを薬物排出に用いることではないかと示唆された。
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[Presentation] Serial Femtosecond Crystallography of ABC Transporter2016
Author(s)
Oyama Ryo, Pan Dongqing, Nakatsu Toru, Sato Tomomi, Yamaguchi Tomohiro, Kodan Atsushi, Ueda Kazumitsu, Iwata So, Kato Hiroaki
Organizer
6th Special Meeting, ATP-Binding Cassette (ABC) Proteins: From Multidrug Resistance to Genetic Diseases
Place of Presentation
Innsbruck (Austria)
Year and Date
2016-03-05 – 2016-03-11
Int'l Joint Research
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