2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞内侵襲性病原体に対する自然免疫のmicroRNAによる制御
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26670020
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢野 環 東北大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (50396446)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 自然免疫 / 細胞内感染 / miRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内に侵入する病原体である細胞内寄生細菌やウイルスに対する自然免疫応答制御におけるmicroRNAの同定と機能解析を行うことにより、未だ不明な点の多い、細胞内侵入性の病原体に対する自然免疫制御を明らかにすることを目的としている。本年度は、これまでに細胞内寄生細菌であるリステリア菌、RNAウイルスであるVSV感染に応答してショウジョウバエ培養細胞で発現の上昇するmicroRNAのなかから、発現量の多いmiR-14に注目して解析を行った。miR-14欠損変異体は、ホモ接合成虫はほとんどが致死であるが、わずかな割合で成虫になる。これらの個体を用いて検討したところ、VSV感染に対する感受性を示した。しかしながら、miR-14欠損個体数が少なく、他の方法による検討が必要であると考えられた。 研究開始後、ショウジョウバエ変態期における細胞死に必要なオートファジー誘導にmiR-14が必要十分であるという報告がなされた(Mol. Cell (2015) 56, 376-388)。そこで、オートファジーを介したVSV感染防御に注目し、感染に応じたオートファジー誘導に必要なアダプター因子Ref(2)Pの抗VSV感染における機能を検討した。その結果、Ref(2)PはショウジョウバエS2細胞において、VSV感染依存的なオートファゴソーム形成に必要であり、さらに、個体としてのVSV抵抗性に重要であり、その機能にRef(2)Pタンパク質の多量体形成に必要なドメインが必要であることを明らかにした。変態期の組織改編時のオートファジー誘導におけるmiR-14のターゲット遺伝子はip3k2であるが、幼虫期の栄養飢餓でのオートファジー誘導にはmiR-14, ip3kは必要ない。したがって、VSV感染に対するオートファジー誘導におけるmiR-14の関与が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる、リステリア菌、またはVSV感染に応じたmiRNAの発現解析は独自の研究で得た知見であり、細胞内に侵入する病原体に対する自然免疫シグナルの制御にmiR-14が関与しているという新規の知見を得た。この証明にはさらに、miR-14過剰発現による感染防御応答への影響を明らかにする必要がある。また、miR-14がどのような分子機構でVSV感染防御としてのオートファジー誘導に寄与するのかを明らかにする必要がある。 本年度に検討したRef(2)Pの機能解析は、これまでにその分子機構が明らかになっていない抗VSV感染応答としてのオートファジー誘導機構解明の前進をもたらした。VSV感染に対してオートファジーが細胞、個体レベルで重要であることは示されているが、今年度の検討により、VSV感染直後に形成されるオートファゴソームによる機構と、数時間以上たってからの自然免疫シグナルに対するオートファジーの機能は、その分解する基質は同一ではなく、関与するmiRNAも異なるという予備的な結果を得ている。抗リステリア菌としてのオートファジー機能は、これに対し早い時間に起きるオートファジーが重要である。 Ref(2)Pによる抗VSV機能の分子機構の解明は、miR-14によるオートファジーを介した抗VSVの分子機構解明に重要な情報を与える。また、VSV感染時とリステリア菌感染時に誘導されるmiRNAについて、ゲノム網羅的な情報の解析を終了することができた。この詳細な解析により、細胞内寄生細菌とウイルス感染に共通して活性化する自然免疫シグナルに機能するmiRNAと、それぞれに特異的に対する応答に機能するmiRNAを推定することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討により、RNAウイルスであるVSV感染に対する自然免疫経路のmiRNAによる制御が見えてきた。そこで、今後はVSV感染に対するmiRNAの検討に焦点を絞り、主に以下の2点について展開する。 1点目として、これまでに、リステリア菌感染時には誘導されないが、VSV感染時に誘導されるmiRNAとしてmiR-184を同定している。そこで、miR-14に加え、miR-184の抗VSV応答に対する機能を解析する。解析に必要なmiR-184変異体、miR-184強制発現体はすでに入手し、解析を開始している。個体としてのVSV感染感受性に加え、ウイルス抵抗性に関与すると考えられる自然免疫シグナルにおける関与を重点的に検討する。miR-184ホモ接合個体は生存し、感染抵抗性やそれに関するシグナル経路の解析がmiR-14と比較して容易に行うことができる。 2点目としては、Ref(2)Pを介したオートファジー誘導との関連により、オートファジー誘導におけるmiRNAの機能解析を解析する。Ref(2)Pによる抗VSV反応は、前述の、感染後素早い反応と、感染後数時間におきる反応について、個別にその分子機構解析を進行中である。そこで、それぞれにおけるmiR-14, miR-184の機能をショウジョウバエ成虫個体、ショウジョウバエ培養細胞を用いて詳細に検討する。miR-184の強制発現は、さまざまな組織特異的に行い、感染時を模倣したmiR-184発現上昇がもたらす応答を詳細に解析する。 これらの検討により、ウイルス感染に対する自然免疫経路の制御におけるmiRNAの機能が明らかになり、ウイルス感染のmiRNAとそのターゲット配列を標的とした創薬の基盤となる知見を得ることが期待される。
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Causes of Carryover |
昨年度の研究により、miRNAの抗ウイルス機能としてオートファジーの制御を介した機能をクローズアップすることができた。これにより、オートファジーによる組織恒常性を焦点とした他研究と、ショウジョウバエ飼育用器具、試薬の一部を共有することができた。そのため、予算として計上した物品費より低額で成果を上げることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の成果により、miRNAが機能している抗ウイルスに関する自然免疫シグナルを絞り込むことを得ている。その解析と証明のため、抗体等の免疫学的手法に必要な試薬、細胞生物学的手法に必要な試薬の購入が必要となっており、これらに使用する。また、当初の予想よりも注目しているmiRNAの機能の多彩さを見いだしていることから、予想以上の報数の論文等により研究成果を発表する可能性が高い。このため、旅費、その他に使用する。
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