2014 Fiscal Year Research-status Report
転写調節因子を指標としたミクログリア制御薬探索法の確立
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26670036
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
香月 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (40240733)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミクログリア / オルタナティブ活性化 / 神経保護 / パーキンソン病 / アルギナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内のミクログリアは状況によって複数の異なる活性化状態を取り、中枢神経組織の病理形成・修復過程において重要な役割を担う。本研究では、転写調節因子IRF-4 などの発現亢進作用を指標として、新規の作用機序に基づく神経疾患予防・治療薬候補を見出すことを目的とする。今年度は、ミクログリアが豊富に含まれるラット中脳の培養組織切片を用いて、IRF-4、誘導型NO合成酵素(M1型ミクログリア活性化マーカー)およびアルギナーゼ-1(M2型ミクログリア活性化マーカー)の発現変動、ならびにドパミンニューロン保護効果を指標として8種の化合物の薬理作用を検証した。その結果、ナツメグ由来の天然化合物であるマセリグナンが、リポ多糖の誘導するミクログリアのM1型活性化には影響することなく、M1型ミクログリアの働きによって誘導されるドパミンニューロンの変性を著明に抑制することを見出した。詳細な組織化学的検討の結果、マセリグナンは中脳組織内の一部のミクログリアにM2型活性化を誘導することが示唆された。この効果は、核内受容体/転写調節因子として知られるPPARγの活性化を介して発現しており、PPARγの遮断あるいはアルギナーゼの阻害によってマセリグナンのドパミンニューロン保護効果は消失した。以上の知見は、転写調節因子の刺激によるミクログリアのM2型活性化の促進が脳組織内において神経保護効果をもたらしうることを示すとともに、マセリグナンが新たな機序に基づく神経変性疾患予防・治療薬の候補となる可能性を提示した。 また、化合物一次スクリーニング法の確立に向けて、ミクログリア系BV-2細胞において転写因子活性化を化学発光シグナルとして検出するための実験系の構築を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者の擁する実験技術である脳組織切片培養法を活用して、ミクログリア活性化方向の制御に基づいて神経保護作用を発揮する化合物候補を同定し、今後の化合物の構造展開への手がかりを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
化合物一次スクリーニング法のプロトタイプを構築し、IL-4やマセリグナンを陽性対照としてアッセイ系としての感度・精度の検証を行うことでスクリーニング法の最適化を行う。また、今年度見出したマセリグナンを母化合物として構造展開を行い、ミクログリア制御・神経保護においてより優れた化合物を見出すことを目指す。さらに、ミクログリア活性化制御におけるPPARγとIRFとの相互関係について、シグナル伝達機構の観点から解析を行う。
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Research Products
(25 results)