2014 Fiscal Year Research-status Report
Pin1酵素阻害剤の迅速スクリーニング用プローブの開発
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26670060
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中川 秀彦 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (80281674)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ケミカルバイオロジー / 酵素阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
Pin1阻害剤であるVER1の化学構造を基に、酵素疎水性部位と結合する部分構造を環境応答性蛍光性官能基に置換した化合物を分子設計した。Pin1酵素のPDB登録立体構造に基づいて、リガンド結合シミュレーションソフトウエアであるGlideおよびCLC Drug Discovery Workbenchをもちいて、設計化合物のドッキングシミュレーションを行い、リガンド結合指標値がよい値を示した化合物の合成を行った。合成した化合物について、まずPin1酵素阻害能を評価した。評価にあたっては、既存の酵素活性評価法を用いた。その結果、合成化合物の内、4種類に比較的強い酵素阻害能が見いだされた。これらのうち2種の酵素阻害能は、母化合物であるVER1と同程度のものであった。このことから、合成化合物のうち4種について、Pin1酵素に結合して基質代謝を阻害できることが判明した。次に、これらの化合物とPin1酵素を混合した際の、化合物の蛍光変化について観察した。その結果4種の化合物のうち、3種についてはPin1酵素存在下と非存在下における蛍光強度およびスペクトルに顕著な変化が見られず、Pin1結合時の蛍光変化による結合能評価には使用できないことが分かった。又、1種についてはPin1酵素存在下において、わずかに蛍光が上昇する傾向が見られたが、既存の阻害剤であるVER1との明確な競合は見られなかった。今後、環境応答性蛍光性官能基の結合位置、官能基の種類を変更して蛍光強度変化の大きい分子を設計・合成するとともに、蛍光性官能基に消光団を結合させた分子設計も導入することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大きな蛍光変化を起こす化合物の同定には至っていないものの、環境応答性蛍光性官能基を用いることで結合によって蛍光増大を起こすという当初のコンセプトに沿った傾向を示す化合物は得られており、置換位置や蛍光団の検討によって改善が見込めるから。
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Strategy for Future Research Activity |
環境応答性蛍光性官能基の種類と置換位置を変更した化合物を複数分子設計し検討する。また、これらの蛍光団に適切なリンカーを介して消光団を導入して、蛍光変化率の向上を図る。さらに、傾向偏光測定を応用し、結合時と非結合時の傾向偏光解消の違いを測定する。
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Causes of Carryover |
合成化合物とPin1酵素を混合した際の蛍光強度変化が比較的小さかったため、化合物の置換基、蛍光性官能基との結合様式の検討など、化合物の構造展開に関する検討に時間を費やしたため、酵素アッセイの回数が予定より少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度検討に基づいて、化合物とPin1酵素を用いた酵素活性阻害実験および酵素結合時の蛍光強度測定など、生化学実験が増加することが見込まれる。酵素等の高価な試薬類に次年度使用額分を充当することで効率よく研究を推敲できる。
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