2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血液脳関門機能診断を可能とするエキソソームバイオマーカー確立への挑戦
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26670072
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
千葉 寛 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40159033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
降幡 知巳 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80401008)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エキソソーム / 血液脳関門 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞(HBMEC/ciβ)から分泌されるエキソソームを単離し、そこに内包される遺伝子発現情報から、細胞内の遺伝子発現量や機能を予測することを目的としている。この目的達成のため、まずエキソソーム単離条件の確立およびエキソソーム内遺伝子発現情報の解析をおこなった。 これまでに汎用されているエキソソーム単離法として、遠心法がある。本法を用いるためには大量の培養上清が必要であることから、HBMEC/ciβを100-mm dish 10枚を、エキソソーム除去培地を用いて培養した。この上清を回収して、まず500 g、10分、4℃で遠心し、その後3,000 g、10分、4℃および10,000 g、30分、4℃の遠心をおこなった。続いて、120,000 g、70分、4℃の遠心をおこない、この沈殿をPhosphate-buffered saline (PBS) (-)で洗浄し、再度120,000 g、70分、4℃の遠心をおこなった。この沈殿をPBS(-)で懸濁し、エキソソーム画分とした。 エキソソーム単離の検証のため、上記画分を4% Paraformaldehyde (PFA)で固定し、2%リンタングステン酸でネガティブ染色をおこなったのちに、電界放射型透過電子顕微鏡にて解析した。その結果、直径50-70 nmの球状の像が観察され、これは一般にエキソソームとされる形状と一致すると考えられた。 次に、エキソソーム画分からtotal RNAを抽出してcDNAを合成し、HBMEC/ciβに発現するmRNAの発現解析をRT-PCRによりおこなった。その結果、代表的な血液脳関門トランスポーターであるglucose transporter 1および密着結合タンパク質であるclaudin-5のmRNA発現が検出できた。 以上より、上記遠心法によりHBMEC/ciβからエキソソームが単離できること、またエキソソームから親細胞内の遺伝子発現情報が得られる可能性があることが、明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は主にエキソソーム単離法の条件の確立およびその最適化を進め、目処をつけることができた。さらに、エキソソームから遺伝子発現情報を抽出できることも明らかとした。したがって、来年度の研究を推進する基盤は概ね整ったと考えられる。 以上のことから、現在までの達成度を(2)おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、主に、エキソソームに内包される遺伝子発現情報の詳細を明らかとし、さらにHBMEC/ciβ内の遺伝子発現状態がエキソソーム内に反映されるか検討をおこなう。これまでにエキソソーム内にはmiRNAやmRNAなど種々のRNAが含有されていると考えられているが、それらの発現プロファイルが親細胞の発現プロファイルと一致するか明らかとなっていない。そこで、分化用培地または未分化培地で培養したHBMEC/ciβからそれぞれエキソソームを単離し、それらに含まれるmiRNAおよびmRNA発現プロファイルをマイクロアレイにより網羅的に解析することにより、エキソソームに内包される遺伝子発現情報の詳細を明らかとする。また、同時に親細胞におけるmiRNAおよびmRNA発現プロファイルの網羅的解析をおこない、エキソソーム内のmiRNA・mRNA発現プロファイルとの比較解析をおこなう。これまでに我々は、分化用培地と未分化培地で培養したHBMEC/ciβの間で多くの遺伝子発現量に差異が認められることを明らかとしてきた。まずこれら遺伝子(例えば、matrix metalloproteinase 1など)を用いて、両細胞由来のエキソソーム間にも同様の差異が認められるか解析をおこなう。次に、P糖タンパク質やBreast cancer resistance proteinなど薬物動態関連遺伝子を対象とした検討を進め、さらには分化用培地と未分化培地で培養した両細胞間におけるこれらの機能レベルが、エキソソーム内で反映されうるか、検討を進める。 一方、HBMEC/ciβ由来エキソソームの臨床応用に向けては、これを単離する手法を開発する必要がある。これまでに組織特異的エキソソームの単離には、抗体を用いた単離法が有望とされている。そこでHBMEC/ciβ由来エキソソームのプロテオミクス解析にも取り組み、上記マイクロアレイ解析と照合することで、HBMEC/ciβ由来エキソソーム特異的抗原の候補を見出したい。
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