2014 Fiscal Year Research-status Report
胆管側膜輸送体による胆汁排泄を介した胆管がん発症分子機構の研究
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26670073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 龍平 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (90376468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 優 東京大学, 医学部附属病院, 研究員 (80650340)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 胆汁排泄 / トランスポーター / 胆管側膜輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2012年、印刷事業所における有機溶剤曝露による職業性胆管がんの発生が社会問題となった。ハロゲン化炭化水素への大量曝露が胆管がん発症の原因であると強く疑われているが、これを裏付ける分子生物学的証拠は見出されていない。本研究は、肝臓中で生じたハロゲン化炭化水素由来代謝物が胆管側膜輸送体を介して胆汁中へ排出され、胆管内に蓄積し胆管上皮細胞に作用することで発がん性を示すという仮説に基づき、ハロゲン化炭化水素によるヒト胆管がん発症リスクの評価およびその分子機構の解明を目的とした研究である。
研究開始年度にあたる本年度(平成26年度)は、主に以下の点に取り組んだ。 ●ハロゲン化炭化水素1, 2-ジクロロプロパンの代謝・体内動態に関する網羅的理解~ジクロロプロパンを投与した実験動物の分泌液を対象とする網羅的成分分析の結果および文献情報を参照し、代謝経路を推定した。その結果、ジクロロプロパンがグルタチオン抱合を経て、メルカプツール酸に至る経路が強く示唆された。さらに、ジクロロプロパン投与時に変動する血中成分を複数見出すことに成功した。その中には、ジクロロプロパン代謝物も含まれており、バイオマーカー候補物質としての可能性をさらに検討していく予定である。また、ヒト化肝臓マウスを用いた検討から、有力な発がん性候補物質であるグルタチオン抱合ジクロロプロパンが、ヒトにおいても胆汁排泄される可能性が示唆された。平成27年度に、より詳細な解析を予定している。 ●グルタチオン抱合ジクロロプロパンの胆汁排泄を制御する分子の同定~グルタチオン抱合ジクロロプロパンの胆汁排泄を制御する分子を同定することを目的として、胆管側膜輸送体ABCG2およびABCC2に着目した解析を行った。各輸送体の機能欠損動物を用いた胆汁排泄試験ならびにin vitro輸送実験の結果、候補輸送体としてABCC2を見出すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロゲン化炭化水素(1, 2-ジクロロプロパン)の代謝経路および体内動態に対する検討が順調に進み、研究二年度目に予定していた輸送体分子に関する検討に着手、関連分子を見出すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究二年度目となる次年度(平成27年度)には、一年度目に構築された各種実験系を用いて、物質量の定量的評価を交えたより詳細な解析を行うとともに、各代謝物の発がん性に対する検討を進める。
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Causes of Carryover |
ジクロロプロパンを投与した実験動物を用いた網羅的成分分析に使用している質量分析機器の故障・修理が相次いだため、本研究に関する実験が行えなかった時期があるため。現在は当該機器の修理は完了しており、順調に実験が進行している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度と同様、各種試薬や実験用動物購入費用などの消耗品費として主に使用することになるが、一部は得られた研究成果を学会等において発表するための旅費、英文誌への論文投稿のための校閲費・印刷費・研究成果投稿料としての謝金・その他の費用として使用する予定である。
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