2014 Fiscal Year Research-status Report
骨形成因子(BMP)阻害因子によるアストロサイト移動制御機構
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26670090
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
山岸 覚 浜松医科大学, 医学部, 助教 (40372362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宝田 美佳 金沢大学, 医学系, 助教 (40565412)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | BMP阻害因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
発生過程において、アストロサイトはニューロジェネシス終了後、脳室下帯のラディアルグリアから分裂によって発生し、大脳皮質内に分布することが知られている(Greig et al., Nat. Rev. Neurosci., 2013)。アストロサイトには神経細胞や他のグリア細胞を栄養するだけでなく、血液脳関門を形成する重要な役割もある(Goldstein, Ann. NY. Acad. Sci., 1988)。一方で、脳損傷時には脳室下帯で分裂を開始し、速やかに損傷部へと移行することが最近、報告された(Benner et al., Nature, 2013)。これらアストログリア細胞は適材適所へと移動する際、様々な外的因子によって制御されていると考えられるが、その実態は良く分かっていない。申請者はこのような因子の1つとして、BMP阻害因子の可能性を見出した。BMP阻害因子を基質としてディッシュ上に予めコートし、マウス由来アストロサイトであるA1細胞を培養した所、24時間後、ほぼ全てのアストロサイトがBMP阻害因子から反発するということを見出し、再現性を確認した。タイムラプス顕微鏡を用いて詳しく観察すると、エンドサイトーシスにより蛍光標識した精製蛋白質が積極的に細胞内へと取り込まれていることを見出した。すなわち、細胞外でBMPの阻害因子として機能すると思われていた分子が、おそらくBMPとは無関係に(受容体を介して)細胞内へ取り込まれていることを明らかとした。また、この反発活性はアストロサイトだけではなく、小脳顆粒細胞に対しても反発活性を示したことから、神経細胞に対しても反発性ガイダンス因子として作用することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ストライプアッセイを用いて再現性よく、アストロサイトに対する反発的な細胞応答性を確認することができている。この反発性機能は神経細胞に対しても作用し、軸索だけでなく、神経細胞体も反発作用を受けることが明らかとなった。すなわち、培養アストロサイトや神経細胞軸索、細胞体はBMP阻害因子非存在領域に集積する。平成26年度の実験は主に精製蛋白質を用いての実験であった為、27年度は分子生物学的解析により同様の作用を確認したいと考えている。その為のFLAGタグを付加した当該遺伝子のcDNAをクローニングし、発現ベクターも構築し、培地中への分泌も確認した。より具体的には、pcDNA3-FLAGベクターにクローニングしたコンストラクトをHEK293細胞にトランスフェクションし、培地からの抗FLAG抗体を用いた免疫沈降により当該蛋白質が細胞外培地中へも分泌されることも確認している。この系を用いることにより、強制発現細胞と神経細胞を隣接培養するコンフロンテーションアッセイが可能となる。このアッセイ系が確立すれば、ドメイン欠損型を用いて機能ドメインの同定を行うことが可能となる。 また、細胞内への取り込み方法としてエンドサイトーシス経路についての解析も行った。まだ結論は出ていないものの、初期エンドソームとの共局在、後期エンドソームとの共局在を確認している。しかしながら、両エンドソームに共局在する数は少なく、他の経路を介している可能性も考えられる。また野生型Rab5、ドミナントネガティブ型のRab5を慶應大学医学部の川内健史先生より共同研究として分与して頂いたので、エンドサイトーシスシス経路を解析する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、HEK293細胞に当該蛋白質を強制発現させ、神経細胞のexplant培養を用いたコンフロンテーションアッセイを確立する。この解析方法によって分泌されたBMP阻害因子が神経細胞の軸索突起伸長に対して抑制機能を有しているか直接的な解析を行う。また、このアッセイ系が確立したら、種々の部分欠損型変異種を作成し、機能ドメインの探索を行う。 次に、アストロサイトを用いたエンドサイトーシス経路の解析を行う。プレリミナリーな結果では、細胞内に取り込まれた小胞群のうちの少数のみが、初期エンドソーム・後期エンドソームと共局在を示さなかった。したがって、種々のエンドソームマーカーと共染色することにより詳細に解析を行い、定量的にエンドサイトーシス経路を解析する。また、Rab5のドミナントネガティブ型をアストロサイトにトランスフェクションすることにより、エンドサイトーシス阻害が見られるか、反発機能の消失が見られるかを検証する。ドミナントネガティブ型Rab5により反発作用が消失すれば、初期エンドソームを介した経路であること、及び細胞への取り込みが反発作用を示す為に必要であることを証明することができる。 そして、in vivoにおける役割を解析するため、免疫染色やin situ hybridizationにより生体内での発現パターンの変化を解析する。発生期における時間空間的な発現上昇や減少と、神経細胞移動、軸索伸長、アストロサイトの発生に対する意義を解析する。特に、脳梗塞や脊髄損傷で見られるグリア瘢痕でのアストロサイト集積時おいて、BMP阻害因子の発現上昇が関係しているかどうか、確認を行う。
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Causes of Carryover |
当初の実験計画では単価の高価な精製蛋白質を用いた実験を計画していたが、計画よりも使用量が少なくて実験を遂行することが可能であったため、26年度の使用額が予定よりも少なく、繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究方針で記述した通り、in vivoにおける役割を解析するため、免疫染色やin situ hybridizationにより生体内での発現パターンの変化を解析する。発生期における時間空間的な発現上昇や減少と、神経細胞移動、軸索伸長、アストロサイトの発生に対する意義を解析する。特に、脳梗塞や脊髄損傷で見られるグリア瘢痕でのアストロサイト集積時おいて、BMP阻害因子の発現上昇が関係しているかどうか、確認を行う。これらの実験で、精製蛋白質や組織化学的解析試薬の購入に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)