2015 Fiscal Year Research-status Report
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26670103
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
筒井 秀和 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (30392038)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電位センサードメイン / 状態遷移 / 膜電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
電位センサーの状態遷移機構に関して、「S4のみが局所的な構造変化を引き起こす」のか、あるいは「センサー全体がよりグローバルな構造変化を引き起こす」という相対するモデルが提唱されている。これはS4の回転運動と同様に本質的な問題として捉えられている。2013年に我々が発表した結果は、電位センサーN末に繋いだ蛋白質の光学レポータから状態遷移に付随する光学信号を検出したもので、後者を支持していた。これに対して2014年にPerozoのグループから発表された電位センサードメイン変異体の結晶構造比較の結果(Li et al., Nat. Struct Mol Biol. 2014) は後者を支持していた。ただし、これらの計測では、蛋白質レポータが電位センサーの機能を干渉する可能性や、非生理的な結晶化条件がもたらす影響が必ずしも明らかではなかった。本研究において、平成27年度には環境応答性の非天然蛍光アミノ酸レポータをアンバーサプレッションコドンを用いて電位センサーの各部位に導入し、膜電位固定実験と組み合わせ、状態遷移時の蛍光変化をミリ秒の時間分解能で光学計測した。その結果、S1等などにおける結晶構造比較では静的であると考えられる残基からもロバストは信号が発生する事を明らかにした。即ち、本研究の結果は、状態遷移はS1を含むよりグローバルな構造変化を伴うとする概念を支持するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度中に構築した時間分解レーザー燐光偏光を膜電位と時間の関数として測る装置を用い、Xenopus Oocyteの発現系で予備計測を行った結果、次のような問題点が明らかとなった。(1)燐光計測のために溶存酸素を低下させる必要がある一方で、長時間の繰り返し計測により微弱な燐光光を積算する必要がある。低酸素下でのXenopus Oocyteの長期間の膜電位固定実験の報告はこれまで殆どなかったが、多くの細胞で時間とともにリーク電流が増え、膜がダメージを受ける事が解った。(2)Eosin-Maleimideで電位センサードメインのシステイン残基をラベルする場合、無視出来ない非特異的吸着が発生した。これは、燐光信号のベースラインとなり回転運動を定量的に評価する事を難しくする。その後、画像解析による検討の結果、非特異的吸着の約7割以上は、ビテリン膜との結合であり、細胞膜脂質や膜たんぱく質との結合では無い事が解った。ビテリン膜の除去は原理的には可能であるものの、前述の低酸素下における膜の健常性をさらに悪化させた。このような理由の為、本計測は状態の良い細胞を用いて細心の注意を払って計測を行っていく必要があり、結果を急ぐべきではないと考えられた。回転運動に関しては、当初考えていたようなスピードでデータが得られなかったが、前述のように、状態遷移機構に関して、当該分野において重要な結果が得られた。これらを総合して、「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(平成27年度)に得られた環境応答性の非天然蛍光アミノ酸レポータの結果を基礎に、再現性の確認、電位依存性の詳細な解析、既に発表されている結晶構造との対比を行いつつ、論文として発表するための量と質を持ったデータを蓄積する。燐光偏光の計測実験に関しては、本年度に得られた問題点に十分に留意しつつ基礎実験を継続する。また、新たに、電位センサー分子のS4セグメントを金ナノ粒子で標識し、一分子散乱を計測する事によりS4の運動を検出するための実験系の構築にも取り組む。
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Causes of Carryover |
既存の研究機器・試薬を一部、今回の研究に使用できるようになった為、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
金ナノ粒子で標識した電位センサー蛋白質からの散乱光を、膜電位固定実験と組み合わせて高感度に時間計測する実験を行う。このための光学部品の購入費などに充てる。
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