2015 Fiscal Year Annual Research Report
CRISP/Cas9法を用いた多能性維持遺伝子破壊による癌幹細胞形成能の検証
Project/Area Number |
26670156
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金田 安史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10177537)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞が豊富に存在すると考えられるスフェア形成をヒト前立腺癌細胞株でおこなったときに、多能性維持因子が強く発現し、中でもNANOG の発現が高まることを見出してきた。NANOGのsiRNAを導入した癌細胞はマウスでの腫瘍抑制能が劇的に低下することが報告されている。NANOGにはpseudogeneが10種類以上あり、その中のNANOGP8は正規のNANOG 遺伝子(NANOG1)とは2つのアミノ酸が異なるだけで、NANOG1とほぼ同様のNANOG蛋白質を産生しており、癌細胞では特にその発現が高い。本研究では、CRISPR/Cas9を用いて、去勢抵抗性のヒト前立腺癌細胞DU145で発現しているNANOG1, NANOGP8を完全にノックアウトし、スフェア形成、腫瘍形成、抗癌剤耐性に及ぼす影響について検証した。NANOG1とNANOGP8 のノックアウト細胞は、いずれもスフェア形成、足場非依存性増殖、浸潤能、抗癌剤(Docetaxel)耐性能がいずれも低下し、2つの遺伝子間での差はなかった。しかしいずれも正常培地での増殖には影響がなかった。SCIDマウスの皮内に腫瘍を形成させたところ、いずれの遺伝子欠損株でも、きわめて小さい腫瘍形成が見られた。これらの形質変化は、それぞれの欠損遺伝子の強発現で回復したが、NANOG1欠損株にNANOGP8遺伝子を、NANOGP8欠損株にNANOG1遺伝子を強発現させても、正常に回復した。従来、ヒト前立腺癌細胞では腫瘍形成や抗癌剤耐性についてはNANOGP8の関与のほうが大きい報告されてきたが、2つの遺伝子は癌幹細胞の示す形質に対して同等に機能していることが明らかになった。次に、NANOG1, NANOGP8のダブルノックアウト細胞の分離を試みたが、300以上のコロニーを検索したが、いずれもダブル欠損株ではなかった。NANOG蛋白の発現は細胞の生存に必須であり、特にこの遺伝子が強く発現している癌幹細胞の維持にはきわめて重要な因子であることが示唆された。
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