2014 Fiscal Year Research-status Report
試験管内におけるES細胞からの精原幹細胞誘導と効率的な減数分裂誘導法の開発
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26670162
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 歩 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (80639708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ES細胞 / 生殖細胞 / 減数分裂 / 精原幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの生殖細胞研究ではES/iPS細胞から試験管内で精子の源である精原幹細胞を誘導する方法とそこから減数分裂を誘導する方法は確立されておらず、生体組織を利用せずに完全にIn vitroでES/iPS細胞から健常な精子や卵子を作成することは未だ成功していない。申請者らはマウスES細胞 (雄由来) で薬剤依存的にMax遺伝子をノックアウトすると減数分裂様の細胞が出現することを見出した。もしMaxノックアウトES細胞が減数分裂に先立ち精原幹細胞様の状態を経ているのならば、精巣組織から樹立された生殖幹細胞 (Germline Sten Cell; GS 細胞) の培養条件で維持することが可能であると思われる。そこで本計画ではMaxノックアウトES細胞から減数分裂が誘導されるときにどのような細胞の状態を経ているのかを解明し、ES細胞から精原幹細胞の樹立、および効率的に減数分裂を誘導する系を確立することを目指して、以下の研究項目について取り組んだ。 1)MaxノックアウトESC から減数分裂が誘導されるまでの発生系譜の解明 2) 精原幹細胞様細胞 (Germline Stem Cell Like Cell; GSCLC) 誘導の試み 3)効率的な減数分裂誘導系の確立 4) Max が減数分裂を制御するメカニズムの解明
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生殖細胞の分化は減数分裂に先立ち始原生殖細胞(PGC)の状態を経て、その後精原幹細胞へと分化する。PGC分化に必須なBlimp1をノックアウトしたMaxノックアウトES細胞はPGCの状態になることができないが、にもかかわらず減数分裂を開始した。更にES細胞の分化を抑制する培地条件(2i条件)においても減数分裂開始を抑制することはできなかった。つまりMaxノックアウトES細胞は分化の過程を経ずに直接的に減数分裂へと突入している可能性が高まった。GS細胞培養条件でもやはりMaxノックアウトES細胞は減数分裂を開始してしまうことから、当初の目的のひとつである精原幹細胞様細胞の誘導は難しくなったが、逆にこれはMaxが減数分裂開始を直接的に制御する重要な因子であることを意味しているため、減数分裂開始メカニズムの解明へとつながる大きな成果と思われる。実際に遺伝子ノックアウトや薬剤添加実験によりMaxノックアウトES細胞は生体内と同様な減数分裂開始機構を備えていることがわかってきた。更に生体内の減数分裂におけるMaxタンパク質の局在を観察したところ、減数分裂直前ではMaxタンパク質の量が極めて減少していることも分かった。これらのことはMaxは減数分裂を抑制する上で極めて重要な鍵因子であることを示唆している。また生体内の生殖細胞は試料として少量しか得られないことが解析を困難にするひとつの要因であるが、MaxノックアウトES細胞はこの問題を克服できる。今後生体内では困難な実験をこの細胞を用いることにより、これまで分からなかった減数分裂開始のメカニズムについて明らかにできるのではないかと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
MaxノックアウトES細胞が分化の過程を経ずに減数分裂経といたる可能性については当初から予想していたため、今後も計画書どおりにMaxが減数分裂を制御する因子であるという仮説にたって研究を進めていく。即ちMaxが生体内で減数分裂を実際に制御する可能性について明らかにしていきたい。同時にMaxノックアウトES細胞を用いて明らかになったことを、GS細胞へと応用して減数分裂開始機構の解明をvivoとvitroの両面から進めていきたい。
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Causes of Carryover |
予算の多くを占めるのはES細胞の培養に掛かるLIF及びGS細胞の培養に掛かるGDNF等多数のサイトカインである。昨年度はES細胞の培養がメインであり、これを使った遺伝子ノックアウト実験を主に進めたが、GS細胞の培養は昨年度の後半に開始したためその分次年度使用額が生じた。今後GS細胞の培養を維持する上で多額の費用が掛かると思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度はGS細胞を主に解析対象にする予定であるため、GS細胞の培養に必要なサイトカイン(GDNF, EGF, bFGF, LIF等)や各種抗体等購入する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Functional Compensation Between Myc and PI3K Signaling Supports Self-Renewal of Embryonic Stem Cells2015
Author(s)
Hishida T, Nakachi Y, Mizuno Y, Katano M, Okazaki Y, Ema M, Takahashi S, Hirasaki M, Suzuki A, Ueda A, Nishimoto M, Hishida-Nozaki Y, Vazquez-Ferrer E, Sancho-Martinez I, Izpisua Belmonte JC, Okuda A.
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Journal Title
STEM CELLS
Volume: 33
Pages: 713-725
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Forced Expression of Nanog or Esrrb Preserves the ESC Status in the Absence of Nucleostemin Expression.2015
Author(s)
Katano M, Ema M, Nakachi Y, Mizuno Y, Hirasaki M, Suzuki A, Ueda A, Nishimoto M, Takahashi S, Okazaki Y, Okuda A.
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Journal Title
STEM CELLS
Volume: 33
Pages: 1089-1101
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Identification of Ccr4-not complex components as regulators of transition from partial to genuine induced pluripotent stem cells.2014
Author(s)
Kamon M, Katano M, Hiraki K, Hishida T, Nakachi, Nizuno Y, Okazaki Y, Suzuki A, Hirasaki M, Ueda A, Nishimoto M, Kato H, Okuda A
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Journal Title
Stem Cells and Development
Volume: 23
Pages: 2170-2179
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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