2014 Fiscal Year Research-status Report
転写制御因子HIF-1による抗癌剤耐性獲得の分子機構とそれに対する癌治療法の開発
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26670164
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
田中 信之 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80222115)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 肺癌 / 薬剤耐性 / 癌幹細胞 / HIF-1 / Gli1 / 炎症 / アポトーシス / gefitinib |
Outline of Annual Research Achievements |
gefitinibの治療効果におけるHIF-1抑制の重要性を解析した結果、安定型変異体HIF-1αを発現させるとgefitinibによる増殖抑制は起こるもののアポトーシスが阻害されるという結果が得られた。アポトーシス誘導機構を解析したところ、gefitinib処理により転写因子FoxO3の活性化とそれによるアポトーシス実行分子Bimの誘導が見られ、Bimをノックダウンするとアポトーシスが起こらないことを見出した。更に、ゲフィチニブ耐性獲得に重要なHGF刺激を加えた際、gefitinib処理によるHIF-1α抑制が見られないこと、PTEN変異によりgefitinib耐性を獲得したPC9細胞でもgefitinib処理よるHIF-1αの抑制が見られないことから、HIF-1がgefitinib耐性獲得に重要だと推測された。更に、HGF処理をしてもgefitinibとHIF-1阻害剤の併用でアポトーシスが誘導され、HIF-1が肺非小細胞癌の耐性獲得に重要である事を明らかにした。 一方で、肺癌で恒常的に活性化しているHedgehogシグナルの転写因子Gli1がアダプター分子MEP50を介してアルギニンアルギニンメチル基転移酵素PRMT5と複合体を作ることを見出した。この結合によりGli1がメチル化されて活性化することを見出した。MEP50とPRMT5の両者は転写因子STAT3によって直接発現誘導されること、EGF等のチロシンキナーゼ型受容体やIL-6等のサイトカイン受容体刺激がSTAT3 を介してGli1を活性化させることを見出した。更に、癌幹細胞数がGli1, MEP50, PRMT5の発現のいずれを抑制しても低下することを見出した。更に、Gli1阻害剤GANT61を処理すると癌幹細胞が効果的に減少することを見出し、肺癌の効果的な化学療法になり得るのではないかと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回の結果から、ゲフィチニブ耐性獲得の大きな要因になっているHGF刺激を加えた際にgefitinib処理によるHIF-1α抑制が見られないこと、HGFによってgefitinib耐性を獲得した状態で、gefitinibとHIF-1阻害剤を使用するとアポトーシスの誘導が観察され、HIF-1が肺非小細胞癌の耐性獲得に重要である事を明らかにした。今後は、もう一つの大きな要因となっているc-Met遺伝子増幅についても検討を加えるが、c-MetはHGFの主要シグナル伝達分子であり、この経路にも効果がある事が期待出来る。更に、ヒト肺癌患者サンプルでのHIF-1αの発現量と臨床経過の比較から、HIF-1αの発現が高いと予後が悪いということを示す結果が得られつつあり、この面からも効果が上がっていると考えている。これらの結果は、HIF-1による癌治療抵抗性の獲得の重要性を示したものであり、これを標的とする事で肺癌やそれ以外の癌でも効果的な治療法を検討する上で重要な結果であると考える。 更に、Gli1がMEP50/PRMT5を介して活性化すること、この活性化を介して肺癌幹細胞が維持されていることを見出した。このことは、これまでに知られておらず、癌幹細胞の研究分野でも世界の先端をいくものと考えている。更に、MEP50とPRMT5の両者がSTAT3によって発現誘導されること、IL-6刺激がSTAT3 を介してGli1を活性化させること、実際にIL-6刺激やヌードマウスへの移植実験で腫瘍に炎症刺激を加えるとこの経路依存的に癌幹細胞数が増加するを明らかにした。癌幹細胞が微小環境内で炎症によって維持されているのではないかという報告はあるが、今回結果はこの機構を明らかにした。これらの結果は、癌幹細胞を標的とした癌の効果的な治療法の開発においても重要であり、今回の研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
肺非小細胞癌でgefitinib処理により転写因子FoxO3が活性化してBimを誘導してアポトーシスを起こすが、このFoxO3の活性化機構を解明することで、gefitinibの癌細胞に対する効果の機構を明らかにする。次に、HIF-1によるアポトーシス抑制の分子機構をBcl-2ファミリー分子に対する作用の面から解析し、明らかにすることを行う。これらの研究で得られた成果は、効果的な癌治療法の開発につながると考えている。 HIF-1が癌幹細胞の維持に関わっていること、Gli1の活性化を促進することが知られている。このことから、HIF-1による癌幹細胞の維持機構をGli1との相互作用の観点から解析する。実際に、両者は相互作用をするのかは、MRP50/PRMT5/Gli1野芥色に対してのHIF-1の作用、HIF-1を抑制した時に、これらの経路に影響があるかといった観点から研究を進める。さらに、HIF-1はグルコース代謝を亢進させて低酸素状態に対応する。一方で、我々は癌幹細胞でグルコース代謝が亢進していること、癌幹細胞数は高グルコース培地や低グルコース培地で培養した後に、同じ条件でスフェア形成細胞数を計ると、高グルコース培地で増加し、低グルコース培地で低下する結果を得ている。この結果から、HIF-1による癌幹細胞の維持機構を代謝のリプログラミングの観点から解析する。さらに、癌は慢性炎症から誘発されるが、HIF-1は炎症によって活性化して炎症反応の応答にも関わることが知られており、癌幹細胞の維持にも炎症が促進的に働くことが知られている。このことから炎症による癌幹細胞の維持機構をHIF-1とGli1の相互作用、代謝のリプログラミングの観点から明らかにすることを計画している。これらの解析によって、癌幹細胞維持の新しい機構が明らかに出来ると考えている。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] p53-mediated activation of the mitochondrial protease HtrA2/Omi prevents cell invasion.2014
Author(s)
Yamauchi S, Hou YY, Guo AK, Hirata H, Nakajima W, Yip AK, Yu CH, Harada I, Chiam KH, Sawada Y, Tanaka N, Kawauchi K
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Journal Title
J Cell Biol
Volume: 204
Pages: 1191-1207
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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