2014 Fiscal Year Research-status Report
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26670173
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鶴山 竜昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽賀 博典 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10252462)
宮川 文 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90432385)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 質量分析 / 病理組織 / イメージング / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
急性心筋梗塞の症例を十分な光学顕微鏡による観察解析、症例経過の十分な検討によって、統計分析が可能な症例30名以上を選定した。2,5-dihydroxybenzoic acid (DHB)をiMlayer(島津製作所製)により標本表面上に噴霧し、その組織表面上での均質な結晶化を行うことに成功した。心筋梗塞のホルマリン固定パラフィン包埋標本を組織の健常部、病変部を選別して採取し、液相カラムクロマトグラフ質量分析(LC/MS)計で分析を行ったところ、いくつかの細胞質内タンパク質でバイオマーカーの候補になるものが得られた。 その進捗成果は、日本臨床検査医学会(平成26年11月福岡)にて報告し、機関誌への投稿を推薦されるという高い評価を得た。またTsuruyama T, Kakimoto Y. Forensic diagnosis of Acute Myocardial Infarction: Application of Mass Spectrometry. 2014. Int. J. Forensic and Pathology 2(8),1-5.として、イメージングにおける画像解析の方法について報告した。また、方法論については、進捗までのところを、Tsuruyama T, Kakimoto Y and Yajima Y. Application of Mass Spectrometry for Identification of Biomarkers in Formaldehyde-Fixed Paraffin Embedded Specimens. Austin Biomark Diagn. 2014;1(1): 3.として海外誌のレビュー記事として投稿掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量分析用顕微鏡標本の前処理の過程における表面処理、親水化過程の改善により最適化および画像イメージングの改善に成功した。表面処理反応のプロトコールはほぼ確立され、安定したイオン化効率が得られるとともに、併用しているペプチドのイオン化のためのレーザの周波数の改善により、画像の解像度が大きく改善した。病変部の正常部に比べて細胞骨格タンパク質の変化の検出が、顕微鏡標本上で直接可能になった。これまで、同様の報告はイメージングにおいては内外で非常に少なく、先進的な結果と評価できる。さらに顕微鏡標本上のマトリックス結晶の観察を世界で始めて大気圧顕微鏡で系統的に行い、針状結晶の観察に成功した。この点は平成26年度中に大きく進展したものとして評価できる。 またマトリックスの再結晶化におけるマトリックス溶液に、タンパク質溶出の改善を企図し、尿素の混合を行い、イオン化シグナルの改善につとめたが、タンパク質の溶出および、イメージングにおける画像加増度の改善効果は芳しくなかったため、使用を中止した。また酢酸塩の溶液への付加を同様に行ったところ、同様に改善効果は乏しかったため、溶液の開発については検討中である。この点は進捗において課題となっている。現在、マトリックスの種類をこれまで用いてきたもの(α-cyano-4-hydroxycinnamic acid (CHCA), 2,5-dihydroxybenzoic acid (DHB))に加え、芳香環側鎖の変更を系統的に行っている。その後、これまでもちいた溶液を用いて同様の顕微鏡標本上の処理を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン化支援マトリックス溶媒の選定を行い、さらに現在、マトリックスの種類をこれまで用いてきたCHCA、DHBの2種類に加え、化学構造式からイオン化効率を量子化学的な検討から推定し、芳香環側鎖の変更などを逐次行っていく。そのため網羅的にケミカルライブラリーの活用を行い、それぞれの有機化合物の溶液を作成し、iMlayerを用いて噴霧し、顕微鏡標本上での結晶化を行い、測定することでイオン化効率を検証していく予定である。その際にこれまでイオン化の改善策として検討している再結晶化を試みる。また顕微鏡組織表面の結晶化の様子は電子顕微鏡を用いて実施し、結晶状態の確認をしながら最適なマトリックスの選定を行う。これによってこれまで知られていないマトリックスの同定から根本的に検証をしなおす。すでに選定作業に入っている。 検討症例数はさらに増やし、イメージングおよびLC/MSによる健常部、梗塞部の比較を実施し、バイオマーカーとして有用なものの検出を続行する。LC/MSによる分析条件の最適化を実施する。特に心筋に特有なものではない、多くの細胞骨格分子などは分析のバックグランドノイズとなる可能性があるため、これらを分析対象から、分析過程から省くことで健常部・病変部比較による統計分析の精度および感度を向上させることを実施する。得られたバイマーカーはできるだけ質量分析に供した組織標本をそのまま利用し、免疫組織化学によりタンパク質の抗体を用いて染色を実施し、イメージングの結果と照合させる。くわえて患者の血漿サンプルが手に入る場合は、そのウェスタンブロットを実施し、患者、健常者での末梢血濃度の差異があるものを優先して、上の検証をすすめていく。
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Research Products
(4 results)