2014 Fiscal Year Research-status Report
CXCL12をターゲットとした新規MDS治療モデルの開発
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26670186
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 志保 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30632111)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 造血幹細胞ニッチ / 骨髄異形成症候群 / CXCL12 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
ニッチとは幹細胞維持に重要な微小環境のことであるが、骨髄造血幹細胞ニッチについてはマウスにてCXCL12陽性細網細胞が重要と言われている。一方、腫瘍組織のニッチに関しては、白血病を始めとする腫瘍幹細胞の治療抵抗性に関与するという報告のほか、ニッチの異常が血液腫瘍の発症に関与するという報告もある。そこで本研究では造血幹細胞由来の血液腫瘍である骨髄異形成症候群(MDS)においてCXCL12陽性細胞の同定と定量、腫瘍細胞との相互作用を解析し、CXCL12陽性細胞がMDSの病態や疾患発症に果たす役割を解明することを目的とした。 まず、MDS症例および比較対象としてAMLと対照症例の骨髄検体を用いてCXCL12免疫染色を施行した。その結果CXCL12陽性細胞はマウス同様、血管周囲や間質内に局在する細網細胞として同定され、MDS骨髄ではCXCL12陽性細胞密度の増加を認めた。さらに免疫二重染色によりCXCL12陽性細胞はCD34陽性造血細胞と接していることが判明した。 次に、CXCL12産生性間質細胞と血球細胞の共培養実験を行った。具体的には、ヒトCXCL12を強制発現させたマウス線維芽細胞株(3T3)と、ヒト骨髄球系血球細胞株(HL60, THP-1, K562)を共培養し、血球細胞のアポトーシス応答を解析した。結果、共培養下では血球細胞において抗アポトーシス分子であるBCL-2やBCL-XLの発現増加を認めた。この変化はCXCR4アンタゴニストであるAMD3100投与により阻害され、アポトーシス耐性獲得におけるCXCL12-CXCR4シグナルの関与が示唆された。 さらに、MDS骨髄を用いた多重染色を施行したところ、CXCL12陽性細胞と接するCD34陽性血球細胞はBCL-2高発現かつcleaved caspase 3陰性、つまりアポトーシス耐性を有していることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「腫瘍ニッチの可視化」を目指すという点では、MDS骨髄においてCXCL12陽性細胞の形態と局在の同定、CD34陽性血球細胞との関係性を示すことができた。また「腫瘍とニッチの相互作用」の検討という意味でも、CXCL12産生性間質細胞と血球細胞との共培養において、血球細胞の抗アポトーシス分子の発現増加とその経路におけるCXCL12-CXCR4シグナルの関与を示唆することができた為、達成度としては高いものであると考えられる。しかしながら、相互作用の検討において用いた間質細胞がマウス由来であることから、今後はヒトCXCL12産生性骨髄間質細胞を用いた検討も必要と考えられる点、また薬剤耐性についての検討は十分に施行できていない点などから、総合的な達成度はおおむね順調といったところと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍とニッチの相互作用については、さらに検討内容を深めるため、ヒトCXCL12産生性骨髄間質細胞を用いた共培養実験を行い、血球細胞側のアポトーシス応答のみならず、血球細胞が間質細胞に与える影響についても検討を加える予定である。また薬剤耐性についてはAra-Cといった抗癌剤を加えた時の血球のアポトーシス応答について、共培養の系を用いてCXCL12産生性間質細胞の影響を検討する。また当初の計画通り、ヒトMDS骨髄ないし非腫瘍性骨髄検体由来のCD34陽性血球細胞とCXCL12陽性細胞を用いたマウス骨髄移植モデル実験についても施行予定であり、MDSの病態におけるCXCL12陽性細胞の関連性についてさらに解析予定である。
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