2014 Fiscal Year Research-status Report
包括的なミトコンドリア品質管理制御機構の解明と代謝性疾患におけるその破綻
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26670193
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
樋上 賀一 東京理科大学, 薬学部, 教授 (90253640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖田 直之 公益財団法人佐々木研究所, 付属研究所, 研究員 (60453841)
須藤 結香 東京理科大学, 薬学部, 助教 (70646695)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリア品質管理 / ミトコンドリアシグナルペプチダーゼ / SIRT3 / ミトファジー / PINK1/PARKIN |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアの品質は、オートファジーによる傷害ミトコンドリアの除去(ミトファジー)やプロテアーゼによる傷害ミトコンドリアタンパク質の分解など、オルガネラおよびタンパク質レベルそれぞれで担保されており、前者にはPINK1/PARKINが、後者には脱アセチル化酵素活性を有するSIRT3が重要であることが知られている。また、PINK1およびSIRT3のプロセシングにmitochondrial processing peptidase(MPP)が関わることが報告されている。加えて、MPPによるPINK1のプロセシングが抑制されると、PINK1はミトコンドリア外膜表面に蓄積し、Parkinがリクルートされ、ミトファジーが亢進することが明らかとなっている。一方、定量的質量分析手法を用いたSirt3ノックアウトマウスやその細胞でのミトコンドリアタンパク質のアセチローム解析から、抗酸化酵素であるSOD2や傷害タンパク質の分解に関わるLonプロテアーゼ、分子シャペロンであるHSP70などもSirt3の基質であることが示されている。非常に興味深いことに、我々は抗老化・寿命延伸作用のあるカロリー制限(CR)した脂肪組織では、摂食状態に関係なく、sterol regulatory element binding protein 1c(Srebp1c)依存的に、37KDaの前駆型Sirt3タンパク質から28KDaの活性化型へのプロセシングが亢進していることを発見した。 本研究では、1)CRによるSIRT3のプロセシング機構を明らかにする。2)そのプロセシング機構の機能低下によるPINK1/PARKINそして、ミトファジーに及ぼす影響を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRによるSIRT3プロセッシング亢進の詳細を検討した。その結果、SIRT3は脂肪組織において、Srebp1c依存的に、37KDaの前駆型から、中間型を経て28KDaの成熟型に、2段階切断をうけることが明らかとなった。また、前駆型から中間型へはMPPが、中間型から成熟型へはmitochondrial intermediate peptidase(MIPEP)が関わる可能性が示唆された。さらにCRにより、Srebp1cが転写レベルでMIPEPの発現を亢進するが、MPPα、βの発現には影響を及ぼさないことが示唆された。同様の結果は、肝臓、心臓、腎臓、骨格筋では観察できなかった。 培養細胞では、脂肪前駆細胞である3T3L1細胞においてSIRT3の2段階切断が観察されたが、筋芽細胞株であるC2C12細胞や肝細胞株Hap1-6では観察されなかった。 以上から、CRによるSrebp1c依存的なSIRT3プロセシングの亢進には、転写レベルでのMIPEPの発現亢進が重要で、脂肪細胞にかなり選択的な現象である可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、膵β細胞株であるMIN6、神経芽細胞株PC12において同様の解析を行なう。そして、SIRT3のプロセシングにおいて2段階切断が観察できる細胞株を用いて、MPPα、β、MIPEP発現を修飾することによるSIRT3プロセッシングへの影響、SIRT3の標的分子のアセチル化レベル、酸化ストレスレベル、ミトコンドリア膜電位、PINK1/PARKINを介したミトファジーへの影響などを解析する。 以上の解析から、ミトコンドリアタンパク質のプロセシングに関わるシグナルペプチダーゼ群が、これらオルガネラもしくはタンパク質レベルでのミトコンドリア品質管理制御選択における決定因子であるという仮説1)、2)を証明する。加えて、ミトコンドリアを標的とした、代謝性疾患や神経変性疾患治療薬の開発の端緒とする。 仮説1)MPPやMIPEPをはじめとしたミトコンドリアシグナルペプチダーゼ群の機能低下は、PINK1のプロセシングの減少を介したオルガネラレベルでの品質管理(ミトファジー)を選択する。一方、同ペプチダーゼ群の機能亢進は、SIRT3の活性化を介して、タンパク質レベルでの品質管理を選択する。 仮説2)両者のバランスには細胞や組織特異性があり、そのバランスの乱れが代謝性疾患や神経変性疾患発症に関わる。
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Causes of Carryover |
佐々木研究所沖田博士の研究室では、実験系の立ち上げに時間を要し、本格的な解析に至っていない。そのため、配分額20万円は使用されていない。また、樋上の配分に関しては、実験支払いの都合上、ごく僅か残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
特別な利用計画はない。
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