2014 Fiscal Year Research-status Report
単一細胞レベルでの遺伝子発現プロファイリングによるがんの細胞不均一性解析
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26670195
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
塩川 大介 独立行政法人国立がん研究センター, がん分化制御解析分野, ユニット長 (90277278)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大腸がん / シングルセル / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん組織を構成する細胞は均一では無く、異なった性状を持つ細胞群から成るヘテロな集団であることが知られている。この現象は「がんの細胞不均一性」と呼ばれ、がん細胞に起こる遺伝子変化、さらにはがん幹細胞を頂点とする細胞分化などの要因により惹起されると考えられている。しかし、実際のがん組織がどのような種類の細胞群から構成されるかに関しては、現在まで主に免疫染色等の手法に基づき分類されているに過ぎず、その詳細は不明な点が多い。さらにがん発生の本質とも考えられる幹細胞群のがん化に伴う変化、不均一性に至っては、その本格的な解析がこれまで行われていない。 本研究はがん組織を構成する細胞それぞれの個性をシングルセルqPCRという新しい実験手法を用いて解析しがんの細胞不均一性に対する理解を飛躍的に高めること、さらにシングルセル遺伝子発現解析により明らかになった様々な細胞集団の中で特に幹細胞群の挙動に着目し、がん化に伴う幹細胞の変化という着眼点からがん発生メカニズムの解明を試みることを目標に実施されている。 本研究課題初年度の研究成果として我々は、MinマウスDSS誘導大腸発がんモデルを用い、がん部及び非がん部を構成する上皮細胞群をそれぞれの遺伝子発現プロファイルに基づき機能的に異なる7種の細胞群に分類する事に成功し、階層的クラスタリング法、主成分分析法などの手法を用い細胞のヘテロジェナイティー地図を作成した。さらにここで見いだされた細胞多様性の大腸発がんに伴う変化を解析し、吸収系及び分泌系細胞群それぞれの様々な分化段階に於ける細胞分布どのように変化するのか、さらには正常幹細胞はどのようにがん幹細胞へと変わってゆくのかを遺伝子発現レベルで明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究計画に於いては、初年度の達成目標を(1)研究を遂行するためのプラットフォームの作成、(2)発がんモデル動物を用いた細胞ヘテロジェナイティーの解析、及び(3)次年度以降の研究をデザインするためのターッゲと遺伝子の同定、の3点に定めていた。しかし実際の研究では、当初律速段階になるであろうと予想されていたプラットフォームの作成を順調に進めることができ、27年度以降に行う予定であったヒト大腸がん由来スフェロイド培養株から作成したゼノグラフトモデルに於けるシングルセル遺伝子発現解析を既に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度に行われた研究成果により、大腸がんの発生過程で重要な役割を果たすと考えられる遺伝子の候補を複数得ことができた。27年度の研究計画に於いては、26年度の研究成果により明らかになった知見、それらに基づき導きだされる仮説を検証するため、まずMinマウスの大腸がんより幹細胞のスフェロイド培養株の樹立を行い、特定遺伝子の強制発現/ノックダウン等によるがん発生過程での機能解析をin vitroで、さらに細胞移植によりin vivoで行う。
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