2014 Fiscal Year Research-status Report
レトロウイルスを用いた遺伝子改変日本住血吸虫作製の試み
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26670198
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
太田 伸生 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10143611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊谷 貴 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40369054)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本住血吸虫 / レンチウイルス / 遺伝子改変 / 蛍光発現住血吸虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果としては、研究計画にあるようにレンチウイルスベクターに日本住血吸虫特異的な遺伝子プロモーターの挿入を行い、作製したレンチウイルスを日本住血吸虫に感染させ、外来遺伝子発現を観察することを目標とした。実際には、発育段階を通して強く発現している日本住血吸虫特異的なActin-2とEF-1aの遺伝子上流2000bpの領域をレンチウイルスベクター内の緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子の上流に挿入した。作製したプロモーター挿入レンチウイルスベクターを日本住血吸虫の幼虫期であるシストソミュラにエレクトトポレーションにて遺伝子導入を行い、一過性のgfp遺伝子の発現について調べた。その結果、導入3日後にプロモーター挿入群で有意なmRNAレベルでの上昇が確認された。 次に、このレンチウイルスベクターを293T細胞に導入することでウイルス粒子を作製した。十分量のウイルス価を確認した後に、日本住血吸虫のシストソミュラへのウイルス感染を行った。感染後1週間後にin vitroで培養を行った虫体を回収し、mRNAの発現を調べた。結果、プロモーター挿入ベクター群での高いgfp遺伝子発現が見られたが、顕微鏡下での蛍光像は確認できなかった。一方で、レトロトランスポゾン配列とのAnchored PCRを行うことで、ウイルス遺伝子が日本住血吸虫のゲノム中に挿入されていることが確認できた。 さらに、感染させたシストトミュラをマウスの腹腔に投与することで成虫でのウイルス感染について調べた。感染後7週に成虫を回収したが、回収虫体数が乏しかったこともあり、mRNAでのgfp遺伝子発現や、ゲノムへの挿入は確認できなかった。 これらの結果を踏まえて、次年度以降はGFP単独発現ではなく、Actin-2等との融合タンパク質としての発現など、戦略を調整する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の年度計画にほぼ沿って実験が進んでいる。レンチウイルスベクターへの遺伝子プロモーターの挿入はほぼ予定通り成功したと考えている。これをもとに日本住血吸虫に感染するウイルスを完成させ、それが日本住血吸虫の幼虫であるシストソミューラに感染するか否かを確認する実験を行ったが、mRNA発現を指標とした場合は幼虫に遺伝子の取り込みが見られて予期したように日本住血吸虫ゲノムに取り込まれていることは確認できたが、幼虫の可視的な蛍光発現にはいたらなかったことが今年度計画における未解決の問題として残った。 この方法自体は日本住血吸虫を用いて実施した初めての試みであり、外来遺伝子を日本住血吸虫ゲノムに取り込ませることに成功したという点で十分に満足すべき進捗が得られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の実施研究では外来遺伝子が日本住血吸虫ゲノムに取り込まれることが確認されたものの、表現型として発現されていないことが問題であった。当面はgfp遺伝子の発現によって日本住血吸虫が蛍光発現を行うこと、即ち挿入した遺伝子産物がきちんと確認できることを進める必要がある。当面は平成26年度に摂った方法で何が問題であったかを考察し、必要な方法論の改善を図るべきであると考える。具体的にはGFPの蛍光発現だけを指標とすることによる不安定要因の可能性を考慮して、他の指標遺伝子、例えばアクチン遺伝子の発現をモニターするなどして外来遺伝子の住血吸虫ゲノムへの挿入とその遺伝子発現の確認を追跡していく。 恒常的に蛍光を発現する住血吸虫の作製は寄生虫学的に多くの情報を解析するツールとなる。実験的住血吸虫感染では生体スキャンのシステムを活用して例えばワクチン研究における感染の量的評価が容易になる他、住血吸虫の経皮感染から肝門脈系への成虫の定着までの経路の追跡にも応用できる。さまざまな研究用ツールとしての応用性は高いと考えられ、住血吸虫への外来遺伝子挿入の手法として標準化していくことが必要であると考える。
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Causes of Carryover |
平成26年度にほぼ計画通りの執行に努めたが、小額の執行残が出た。必要な物品、マウス等の支払いは一部で予定額より小額で済んだものがあったためこのような事態になったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本住血吸虫の実験室内維持に必要なマウスおよび飼料に当該経費を充てる予定である。
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Research Products
(1 results)