2014 Fiscal Year Research-status Report
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26670203
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
嘉糠 洋陸 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (50342770)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 難治性創傷 / 医療用ウジ治療 / ヒロズキンバエ / CRISPR/Cas9システム |
Outline of Annual Research Achievements |
医療用ウジ治療(MDT)とは、ヒロズキンバエ幼虫が患者の壊死組織だけを摂取する性質を利用し、人体の難治性創傷を治療する方法である。本研究は、糖尿病壊死や褥瘡、外傷に起因する難治性創傷の効果的な治療法開発に向けた基盤として、(1)蛹化をコントロールできる遺伝子改変ウジ、および(2)血管新生因子bFGFおよびVEGFを発現する遺伝子組換えウジを作出し、その機能評価をおこなうものである。26年度は、人工飼料によるヒロズキンバエの大量飼育系を確立し、遺伝子等微量注入用の卵が安定して採取可能なシステムを構築した。加えて、エクジステロイド代謝酵素をコードするneverland遺伝子の部分欠損ヒロズキンバエを作成するための準備研究を実施した。RNA guided endonucleaseは、バクテリアの獲得免疫システムであるCRISPR/Cas9システム由来のRNA誘導型人工ヌクレアーゼで、ガイドRNA(gRNA)とCas9エンドヌクレアーゼにより標的DNA配列の認識とDNA二本鎖切断がおこなわれる。その修復の際に任意の配列を挿入するが可能であり、この仕組みにより遺伝子機能欠損個体を簡便に作成することができる。モデル実験系として、ショウジョウバエyellow遺伝子に対するgRNAと、Cas9 mRNAを作成し、ショウジョウバエ受精卵に微量注入をおこない、その効果を検証した。また、マイクロインジェクション装置を用いて、ヒロズキンバエ用遺伝子発現ベクター(EGFP発現)のヒロズキンバエ受精卵への微量注入を試み、その後の生存率等を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MDTの効果は上皮化の土台となる肉芽組織の増生速度に依存する。幼虫の分泌液が持つ線維芽細胞刺激作用や血管新生作用により、組織の再生が促進されている。幼虫期が延長されたウジ、および人為的にヒトbFGFおよびVEGFを発現する遺伝子組換えウジは、取り扱いが簡便で、より高い血管新生能を持つと推測され、この治療法そのものの付加価値を高める。26年度の研究成果により、遺伝子改変およびゲノム編集(CRISPR/Cas9)による改良型ヒロズキンバエ幼虫の作成基盤が構築されており、概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)CRISPR/Casシステムによる、エクジステロイド代謝酵素遺伝子neverland部分欠損ヒロズキンバエの作出と蛹化コントロールの評価、および(2)piggyBacトランスポゾンベクターを用いたヒトVEGF/bFGF発現ヒロズキンバエの作出とin vitro機能評価について、研究計画通りに進める。
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Causes of Carryover |
ヒロズキンバエ等における遺伝子改変およびゲノム編集(CRISPR/Cas9)の技術開発が予想以上に進展し、それを主に据える研究計画細目を重点的に実施した。その結果、研究計画の実施順序を一部変更し、物品費(消耗品)および人件費の大部分を使用する他の研究計画細目を次年度以降に実施することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費(消耗品)および人件費を活用し、(1)CRISPR/Casシステムによる、エクジステロイド代謝酵素遺伝子neverland部分欠損ヒロズキンバエの作出と蛹化コントロールの評価、および(2)piggyBacトランスポゾンベクターを用いたヒトVEGF/bFGF発現ヒロズキンバエの作出とin vitro機能評価を実施する。
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