2014 Fiscal Year Research-status Report
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26670223
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村松 正道 金沢大学, 医学系, 教授 (20359813)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウイルス / 発癌 / ポリオーマウイルス / 常在ウイルス / 環状DNAゲノム / 日和見感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、腸内細菌叢のマイクロビオータ解析やメタゲノム解析は、次世代シークエンス法の開発と普及により、腸内のみならず、口腔、気道、尿路系、皮膚サンプルで様々な成果が報告され新しい学問分野が開かれようとしている。これらは主に原核生物のゲノム配列やリボゾーマルDNAやRNAを用いて発展してきたが、ウイルスに関してはほとんど顧みられていない。本研究では、常在ウイルスが存在すると仮定して何らかの病態を説明しうる新規病原性ウイルスを発見する事を目指している。実際、ポリオーマウイルスと言われるウイルスは、皮膚や血液、尿路に存在し、この10年で10種類程度の新規病原ウイルスが発見されている。本研究では、特定の病態(例:免疫が低下した状態)でウイルスを単離し、それが病態と関連するかを検討する試みである。 Rolling circle amplification (RCA)法は、環状DNAを強力に増幅する方法で、これまでこの方法で環状DNAをゲノムとして持つ新規ポリオーマウイルス発見に至った実績をもつ方法論である。本研究では様々な検体を用いて環状DNAを増幅し、その中にポリオーマウイルスやパピローマウイルスに類似したゲノムがあるかを検討する。 H26年度は、まずは環状DNAを増幅するための基礎実験をおこなった。RCA法のキットおよび自作の反応系においてテストサンプルであるプラスミドは、様々な実験サイズで高感度に増幅できる事を確認し、検出系が少なくとコントロール系では機能している事を確認した。次いでヒト検体をテストした。比較的多量に入手できた健常人由来口腔内サンプルを開始材料としてRCA増幅をおこなったところ、様々なDNAが増幅され、顕著なものの配列を決定したところ、大部分は非特異的増幅産物でありウイルスではなかったが、1検体のみヒト配列にまったく一致しない未知の5千塩基対程度の環状DNAを含む事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環状DNA特異的増幅の条件の基本はほぼ決定した。 また検体からのDNAの精製抽出の条件も決定できた。 実際、未知の環状DNAの増幅がされている事から、おおむね順調に研究は進んでいると考える。一方、検体からは環状DNAのみ増幅される事が期待されたが、実際には環状DNA以外も増幅されていた。非特異的増幅が検出のバックグランドをあげている可能性が懸念された。また既知ウイルスで文献上増幅されると期待されたポリオーマウイルス(JCV, MCV, BK)のいずれもRCAにて増幅が見られなかった。そこでこれらのウイルスゲノムに対するPCRを直接検体で試みたところ、少なくともMCVについて皮膚癌サンプルでPCR増幅が認められた。従ってRCA法の検出感度に何らかの問題を抱えている可能性も考慮する必要がでてきた。貴重な免疫不全サンプルに取りかかる前に技術的なブラシュアップが必要と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 ,現在とらえた未知の5千塩基対の環状DNAは全配列を決定し、新規のウイルスゲノムの可能性があるか検討する。もしウイルスゲノムであれば、他の患者検体サンプルでもそのような配列が含まれるのかPCRで検討し、病態との関連性を占う。 2、非特異的増幅の対処は、線状DNA特異的DNA分解酵素を前処理した検体をRCA開始材料とする形で対応するが、感度が犠牲になる可能性もあるので、貴重な検体を使用する前に次の感度をあげるための条件を検討してから線状DNA特異的DNA分解酵素を考慮する。 3、新しい病態を説明しうるウイルスとして小さい環状ゲノムDNAを持つポリオーマウイルスが最も期待できるウイルスと考える。このウイルスはlarge T抗原を制御因子として持ちポリオーマウイルス族で保存されている。large T抗原の配列をもとに、RCA産物をさらにdegenerated PCRで増幅する事で感度アップを期待する。 2と3をもとに検出系のさらなるブラッシュアップを行い、新規ウイルス同定に挑戦する。
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Causes of Carryover |
32,255円の未使用額が生じたが、翌年度に使用する事が効率的と考えた為H27年に持ち越しをした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
32,255円の未使用額は消耗品購入等にあてる。
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