2014 Fiscal Year Research-status Report
研究シミュレーションによる新たな医学系大学院教育の確立
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26670245
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
柄谷 和宏 福井大学, ライフサイエンス支援センター, 助手 (70233997)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大学院教育 / バイオインフォマティクス / 網羅的解析 / 個別化医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究シミュレーションを大学院生向けの学生実習として成立させるため、次のような実習プログラムを組み立てた。 1. NCBI GEO(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)等の遺伝子発現情報データベースからの関連データの検索。 → 2. ダウンロードデータの変換(遺伝子の抽出、分類、比較、意味づけのための数値標準化)。 → 3. 遺伝子発現解析ソフトによる個々の遺伝子の比較とパスウエイ解析ソフトによる全遺伝子発現の比較。 平成26年度は大学院生1人、基礎医学系研究者1人の協力を得て、この実習プログラムをすべて手作業で適用し、検討を行った。1.のステップはArray Express (http://www.ebi.ac.uk/arrayexpress/) の検索エンジンを利用することで、3.のステップについてはIngenuity Pathway Analysis (IPA)の機能を効果的に利用することで、問題なく進行した。バイオインフォマティクスの未経験者対象と仮想しても、実習プログラムの基本骨格として十分活用していけると考えている。ただし、3.を正確に行うためには2.のデータフォーマットの変換やデータ処理に対する要求が高度になり、このステップの自動化ソフトの開発には今回の予算では全く足りないことも判明した。自動化ソフト開発は今後の課題としつつ、本来の目的は教育プログラム構築とその効果の判定なので、次善の方策として2. のステップは外注+マニュアルで行うこととして再構築した。今回自動化ソフトの開発相談をした(株)Subioの担当者と検討を重ねた結果、外注部分はマルチオミクス管理ソフトSubriumを利用することで、1件あたり約1万円程度の費用で実習への適用が可能となり、自動化ソフトの開発よりはるかに安価に進めることができると判明した。本申請の期間中に予算範囲内でプロジェクト進行が可能であることも確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実習のプログラム作製に際し、実施サンプル数を5例以上予定していたが、未だ2例のみである。当初の予定ではより多くの実施例を積み重ねつつ改良を行い、実習プログラムとして運用できる段階までを想定していたので、この点で遅れがでていることは否めない。これはこの2例の適用例を検討している段階で、実習プログラムの中のデータ自動変換が技術的、経済的に困難であることが判明したことで、本プロジェクトの重要なステップについて再検討する必要が生じたためである。その結果、市販ベースでサービスが始まったばかりのSubriumを利用し、一部作業を外注する方法に変更したが、本学でこれらの利用環境が整ったのは平成27年に入ってからである。平成26年度内には前述2例について外注依頼を含めた方法でやり直しを行ったところまで進行した。協力をお願いしている大学院生、研究者ともボランティアであり、実際に各々の研究テーマに即した内容で協力いただいているため、サポートを優先せざるをえない。時間的に実施サンプルを増やすことはかなわず、外注のためのハード、通信面など環境設定を本年度中に整備することを優先したため、予算的にもサンプル数を増やすことは難しかった。 しかし外注による方法の適用により、この部分で改良の検討は必要なくなり、実習プログラムの骨子はまとまった。本年度の実施予定をプログラム改良と並行して行うことは可能と考えており、本年度の予定を変更することは考えていない。改良のための予算、(株)Subioの担当者との打ち合わせ予算を外注の費用に回せるため、予算上の影響もないと見積もっている。
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Strategy for Future Research Activity |
実施例が少ないとはいえ、一部を外注で依頼することにしたため、実習プログラムとしてはほぼ成立していると思われる。今後は、本学の医学系研究博士課程大学院生対象の実験基礎演習として行われるワークショップ(平成27年度6月、11月)に選択課題として組み込み、募集定員を絞り込んで実施することを予定している。教育現場で実習を実施しながら、プログラムの修正、向上を図り、実施数も徐々に増やしていく。また、このプログラムの適用、応用範囲を広げるため、実験基礎演習対象の大学院1年生以外の参加希望者を募り、より臨床的な課題をもつ研究者など医学系すべての分野への応用を目指していく。 本年度については申請者が主催して、国立大学法人生命化学研究機器施設協議会参加校を対象にしたDNAアレイ技術実習を行う予定をしている。これは平成27年度日教弘本部奨励金の補助により、各校のDNAアレイ関連機器担当者を集めて行うもので、この場において研究シミュレーションの紹介、技術発表も行う。DNAアレイ実験、解析技術の普及に付随させることで、医学系の各大学への技術拡散の可能性を探る。 現状では、データベースから得たデータの自動変換ソフト開発はストップしているが、機能を限定させたうえでのソフト開発は可能だと考えている。実習実施数を増やし、実施例を集約し、参加者の意見も参考にしたうえ、まずは必要機能を絞り込んでいく。絞り込まれた機能について完全自動化の可能性、一部をマニュアル操作にすることによる実現可能性などを検討する。ソフト開発の技術的見解については専門家の意見が必要なので、産学官連携支援組織を通して工学部等の専門家、ソフト開発会社など共同研究の連携相手を探す。この場合ソフトに対する機能の要望を正確に把握することが重要であり、上述した実習実施例を増やしていくことが最初の作業ステップとなる。
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Causes of Carryover |
事務手続き上前年度3月~当該年度4月の間に予算の空白期間ができる。当初の予定から少し計画が遅れた関係上、この期間も実習プログラム作製のためにボランティアによる模擬実習を行い、実施サンプル数を増やす予定である。この作業のための予算と、協力いただいたボランティアの研究テーマに対するサポートのための予算を最低限確保する必要があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
模擬実習のサンプル数を当初の計画通りに増やしていくことに使用予定。また、昨年度構築したシステム、回線等ハード面について、画面が小さく実習の進行に支障がでることも判明したため、大画面のモニターの購入に充てたいと考えている。
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