2015 Fiscal Year Research-status Report
がん検診の効果と弊害に関する国民の理解と選好に関する研究
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26670262
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
東 尚弘 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策情報センター, 部長 (10402851)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がん検診 / 選好 / 対策型検診 |
Outline of Annual Research Achievements |
がん検診の効果・弊害の定量化を文献に基づき試みた。効果があるとされている検診の代表として便潜血による大腸がん検診、効果が確定されていない検診の代表として前立腺がんのPSA検診、その中間に位置し、最近米国において推奨年齢が変更された乳がんに対するマンモグラフィー検診について、過去のランダム化比較試験を探索した。大腸がん便潜血、乳がんマンモグラフィー検診を検証したRCTは古い論文が多く、効果弊害の必要な定量的な報告(例えば、がん診断数など)が十分に報告されているものが少数であったが、報告のあるものを検討すると、大腸がん便潜血(Minnesota Colon Cancer Control Study, NEJM1993)では、死亡率減少が13年で1000人あたり2.6人の死亡率減少効果があったのに対して、乳がんマンモグラフィでは(The Gothenburg Breast Screening Trial)では13年で1.4人の減少、前立腺がんでは効果があるとの報告と無いとの報告の間で結論がでていない印象であるが、あると報告された報告(the European Randomised Study of Screening for Prostate Cancer)で1.2人の減少であった。乳がんと前立腺がんではあまり定量的効果はあまり違わないが、診断された癌患者の割合が、前立腺癌では、1000人当たり介入群102人対照群68人と多いのに対し、大腸癌では、20.7人対23.1人、乳癌でも28人対30人であった。これらをもとにして、実際に患者、一般人に対して効果、弊害(偽陽性、偽陰性)の概念と実例を準備して最終的な調査を行うための準備をした。 また、一般人の検診の選考を問うに際してがん種による違いがあると予想されるか、過剰診断の概念を含めることが妥当か、各種パラメーターがゼロか否かで不連続性があるか、理解度をどのようにして検証すべきか、また、可能な限り一般人に近い集団でのパイロットを可能かどうかなどの諸問題に関する検討を定期的に連携研究者とともに検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検診の効果に関する文献検索と、それを元として患者の検診に関する選好を問う場合の概念的な整理を行ってきたが、あまりこれまでにそれらの概念から解決できるほどの知見が見当たらず、位置から検討してきたところ、最終的な調査を準備する前に時間がかかってきている。また倫理審査にも時間がかかっているが、現在審査中であり本年度中までの研究期間に一定の成果を報告できると考えて居る。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、検診の効果として死亡率減少、偽陽性、偽陰性に関する説明文書を作成し、パイロットとして、患者や一般人の意見を聞きつつ最もわかりやすい表現を探索する。それがうまくいけば、インターネットのモニターに対してコンジョイント分析を用いて、それぞれの量を変化させて、当該検診を受けたいか受けたくないか、および対策型検診として実施すべきかどうかを、問うシステムを開発する。それらから、一般人として受けようと思える検診の性能と、それらのパラメーターの代替性に関する検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究費の大きな部分が、わかりやすい説明のパイロット協力者への謝金とコンジョイント分析を行うためのシステムの開発と実施のための登録モニターの依頼(インターネット調査会社への委託)となるが、基礎調査、倫理審査、調査形式の確定などそれまでの準備に時間がかかっているため、計画時に分配された年次費用とは差異が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に上記のパイロット調査とコンジョイント分析を行うことを計画している。
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Research Products
(18 results)