2015 Fiscal Year Annual Research Report
抗RANKL抗体医薬品デノスマブによる重篤副作用発症機構解析
Project/Area Number |
26670265
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
苅谷 嘉顕 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (20633168)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | システム薬理学 / 分子標的薬 / 毒性予測法 |
Outline of Annual Research Achievements |
RANKLに対する分子標的薬であり、骨粗鬆症治療薬であるデノスマブは、重篤な低カルシウム血症を惹起することあり、そのメカニズムをin vivoにて検証することを本年は試みた。デノスマブは、ヒトおよびサルのRANKLに結合するものの、マウスRANKLに対しては結合性を示さない。そのため、昨年度から引き続き、ヒトRANKL分子を発現するマウスの樹立を、BACクローンの遺伝子挿入により試みていたが、ヒトRANKLを充分量発現するマウスは作出できなかった。そのため、遺伝子改変マウスを用いないアプローチでの解析を試みることとした。デノスマブを用いたマウスでの解析は困難なため、デノスマブのRANKLへの結合が起点になるシグナル伝達が、カルシウム恒常性に影響を与える可能性を検証するため、マウスにおいて、RANKLを起点とするシグナル伝達を惹起する作用がある抗体(あるいは抗体フラグメント)の作出を試みた。ファージディスプレイ法を用いたスクリーニングにより、RANKLに結合しシグナル伝達を惹起しうるRANKL刺激抗体と、RANKLに結合するもののシグナル伝達を惹起しないRANKL無刺激抗体の作出に成功した。そこで、これらの抗体をマウスに投与し、血中カルシウム濃度に与える影響を評価したところ、RANKL刺激抗体では、高カルシウム血症となる傾向が認められた。一方で、ヒト培養細胞を用いた検討により、デノスマブは、RANKLシグナル惹起能は、比較的低いことも確認された。これらのことから、デノスマブは、生理的なRANKL逆シグナル誘導因子を阻害することで、低カルシウム血症を惹起する可能性が想定される。現在、昨年度抽出したカルシウム変動を惹起しうる重要因子への影響等の解析を中心に、上記の可能性の検証を詳細に進めている。
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