悪性腫瘍から排出される呼気成分の同定 －悪性腫瘍スクリーニングのために－

2015 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 26670279
• Research Institution: Okayama University
• Principal Investigator: 石川 哲也 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (90221754)
• Project Period (FY): 2014-04-01 – 2016-03-31
• Keywords: 悪性腫瘍 / 呼気

Outline of Annual Research Achievements

本研究は，呼気を利用した悪性腫瘍のスクリーニング検査のために，呼気中に含まれる悪性腫瘍特異的な成分を同定することを目的とした。そのために悪性腫瘍モデルマウスを使用し，コントロールと比べて呼気中に予測した成分が増加するのか調べた。当初は，上皮成長因子レセプター欠損遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを使用する予定であったが，子供が生まれにくく利用しにくい状態になったため，このマウスを利用した実験は行えなかった。次に腫瘍細胞株を腹腔内へ移植したマウスを使用したが，予想に反して血液中および呼気中の予測成分の濃度は上昇しなかった。そこで，白血病由来の腫瘍細胞株をマウスの静脈に導入して実験を行った。
本研究の結果，予測した呼気中の成分が腫瘍細胞株を移植したマウス呼気中に特異的に増加することがわかった。まずコントロールに比べて腫瘍細胞株を移植したマウスでは，呼気中の予測した成分の濃度が有意に高かった。さらに，腫瘍細胞株を移植したマウスにその成分を産生する酵素を阻害する化合物を投与した場合，移植したマウスに比べて呼気中のその成分の濃度が有意に低かった。また，その成分以外の2成分を測定したが，移植マウスで有意に高いものはなかった。したがって，予測した呼気中の成分が，白血病マウスにおいて呼気中に増加すると考えられる。
さらにヒトにおいてもこの成分は悪性腫瘍患者の呼気中に排出されると考えられる。ヒトの各種悪性腫瘍においてこの成分を産生する酵素は増加していた。したがって，悪性腫瘍患者の腫瘍組織でこの成分は産生されており，呼気中に排出されていると考えられる。予測した成分は悪性腫瘍のスクリーニング検査の候補になり得るため，引き続き研究を進める。さらに本研究を通して，より悪性腫瘍の検査として利用価値のある検査法を考えついたため，その研究も進めていく。