2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26670317
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小柳 悟 九州大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (60330932)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 概日時計 / 細胞がん化 / 機能強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会活動の24時間化によって引き起こされる体内時計の機能異常は、がんの発症リスクを増大させることが指摘されている。しかしながら、時計機能を強化することで「発がん」を予防・治療しようとする試みはない。これは体内時計の機能異常のメカニズムが不明であったこと。また、時計機能を回復させる有効な手段がなかったためである。本研究では申請者らが発見した「体内時計の機能維持」に係る転写因子Xを標的とし、不規則な生活パターンで減弱した体内時計の機能を活性化させることで、がんに対する新しい予防法を開発することを目的とする。本研究目的に則し、当該年度は以下の2項目について検討を行った。 (1) 時計遺伝子の機能不全細胞のがん化における転写因子Xの発現変容。 (2) がん化細胞の増殖に及ぼす転写因子Xの役割。
上記の検討の結果、転写因子Xは概日時計の機能が破綻した時計遺伝子の機能不全細胞内では発現が変化しており、更に、細胞をがん化させると野生型細胞および分子時計の転写抑制因子が機能不全になった細胞では、その発現が上昇することが明らかになった。一方、分子時計の転写促進因子が機能不全になった細胞では、がん化によっても転写因子Xの発現に顕著な変化は認められなかった。また、細胞のがん化によって発現が上昇した転写因子Xは、その機能を阻害することで、がん細胞の増殖を抑制できることが明らかとなった。転写因子Xの機能阻害は、細胞周期の進行に関わるサイクリン類の発現を抑制するとともに、p53などの機能も活性化していることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画では転写因子Xの発現を正常化するベクターの作成と本ベクターによる概日時計機能の強化作用を予定していた。しかしながら、転写因子Xの発現変化の方向性は時計遺伝子を機能不全にした細胞種ごとに異なることが明らかになった。そのため、転写因子Xの機能抑制に焦点をあて、がん細胞の増殖能に及ぼす影響について検討を行った。その結果、分子時計の機能不全細胞における転写因子Xの発現上昇は、がんの悪性化を促すことを見出し、本因子が細胞の概日時計とがん化とを繋ぐ因子のひとつである可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子Xが概日時計機能不全時における細胞のがん化に深く関与していることが示唆されたことから、時計遺伝子の機能不全細胞ごとに転写因子Xの発現様式が異なることの原因を探索する。正常時において、転写因子Xは体内時計の機能維持に関わっていることを明らかにしているが、がん化が誘導された際、この機能がどのように破綻していくのかを各種の時計遺伝子機能不全細胞を比較することによって解析する。
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