2014 Fiscal Year Research-status Report
TRAIL経路活性化による糖尿病患者のための分子標的癌予防法の開発
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26670336
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
友杉 真野(堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子予防 / がん / 糖尿病 / 免疫 / TRAIL |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本人を対象とした複数の疫学研究の結果から、「糖尿病患者のがん罹患リスク増大」が報告され、重大な国家的問題として取り上げられている。しかしながら、糖尿病によるがん罹患リスクの増大の理由については未だ十分に明らかとされていない。本研究課題では、糖尿病の進行に伴い、ヒト血中のTRAIL量が低下するという既報に着目した。糖尿病罹患により、免疫機能が低下することは知られている。すなわち、糖尿病による免疫力低下の結果、抗腫瘍免疫を担うサイトカインであるTRAILの減少が生じ、それにより発がんに至る可能性を考えた。以上より、本研究課題では、『TRAIL経路活性化による、発がんハイリスク患者である糖尿病患者のための分子標的癌予防法の開発』を目指す。 平成26年度は、糖尿病モデルラットの臓器におけるTRAIL mRNA量を、正常ラットの臓器と比較検討を行った。その結果、糖尿病個体由来の組織サンプルの内、眼と膵臓では正常と比較してTRAIL発現量は低かった。一方、腎臓、大動脈、肝臓では、正常と比較してTRAIL発現量は高かった(特に肝臓サンプルで顕著な傾向)。臓器によって、糖尿病個体におけるTRAIL発現量の変動は差があると考えられる。今回の結果では、糖尿病個体では、正常個体に比して、膵臓におけるTRAIL発現量は低いという傾向が認められたことから、糖尿病が発癌におけるリスクファクターとされる膵臓に対して着目する。また、ヒト膵臓がん細胞株に対し、糖尿病治療薬であるメトホルミンがp53非依存的にDR5の発現を誘導し、TRAIL感受性を増強することを見出し、論文投稿段階に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験に入るにあたり、糖尿病モデルラットの臓器におけるTRAIL mRNA量を、正常ラットの臓器と比較検討を行った。その結果、対象がん種を膵臓がんに変更する案について検討を行った。しかしながら、ほとんどのヒト膵癌は膵管由来の膵管がんであるが、化学発癌ではマウスおよびラットに膵管癌を発生させることが困難で、ハムスターにおいてのみ化学発癌物質(BOP)によって膵管がんを発生させることが可能(10週間~)。ハムスターはSPF動物ではなく、ゲノム情報も不足している。一方、レプチン受容体異常により著明な肥満を呈するdb/dbマウスを用いた大腸発癌モデルは、糖尿病と大腸発癌の関連を検討するための有用なモデルとして頻用されていることもある。こういった状況から、大腸癌について再検討し直すこととなり、時間を要してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 2型糖尿病モデル動物(STZ/NA投与モデルもしくはdb/dbマウスの使用)の脾細胞や膵臓・大腸サンプルを用い、リアルタイムRT-PCR解析によって、TRAIL発現量を測定する。 2) 1)でTRAILの発現量に差が認められたら(糖尿病モデルで低値であれば)乳酸菌・酪酸菌投与によって、体内TRAIL量の減少が緩和されるか否かの検証 *2型糖尿病患者さんでは、健常人に比して腸内細菌叢における酪酸生産菌数が少ないらしい。 (2014年The 5th Asian-Pacific Topic Conferenceにて滋賀医科大学・安藤先生講演内容) 3) もしくは上記モデル動物に対し、AOM/デキストラン硫酸ナトリウム (DSS)誘発大腸発がん長期実験を施行し、マウスrTRAILもしくはマウスDR5抗体投与によって、発癌が有意に抑制できるか否かの検証
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